北方林業表紙写真集

はじめに
 北方林業の創刊60周年記念に2008年に発刊された北方林業表紙写真集をK先生から研究所あてに送っていただいた。この写真集は1956年から2008年までの北方林業の表紙写真から採録されもので、その84枚の写真は、すべて鮫島先生の撮影されたものである。写真ごとに、鮫島先生の叙述が加えられており、美しく、品のある写真とともに、北海道の森林の森林の歴史的記録にもなっている。鮫島先生にお会いしたことはないが、文章から、誠実で思いやり深い人柄が伝わってくる。半世紀の森林の写真は如何に深く森林と接して来られたかが如実である。K先生をはじめ、多くの方々から尊敬されてきたかが、伝わってくる。

 
北海道の森林
 洞爺丸台風による被害は、この写真集以前のことであるが、その時期から回復した森林の写真もいくつか見られる。どんなに大きな被害だったか、聞いてはいるが、写真では見たことは無いが、回復した森林は見事である。私は北海道で過ごしたのは1960年から1965年であるので、少しは被害にあった森林の跡が残った森林に接したのかも知れないが、そうした被害にあった森林の心覚えはなかった。北海道の年月を経た天然林が失われ、被害木の処理のために、東北を中心に、伐採作業のために、当時、出回り始めたチェーンソーを持った季節労働者が毎年、大挙して北海道に青函連絡船で渡ってくるということであった。回復した森林の写真は美しく、かっての被害の深刻さを浄化させているようであった。
 鮫島先生の写真は、いずれも美しく、高貴さを感じさせるものであり、人間の影響や自然破壊に健気にも生き残り、回復する自然への労わりを感じさせる。北海道の森林がいかに貴重かを思いいたさせるものである。

北海道の開拓から
 美しい森林の写真とともに、更科源蔵:「北海道・草原の歴史から」を読んでいて、北海道の開拓を担った人々の人生に勇気と悲哀が込められており、自然の尊重によって開発が行われたことがわかる。北海道の風景が何故、美しいのか、北海道を開き、維持している人々の生活であることによるものだということが、確信を持てる。大地に生きる人々、その人々によって開かれた大地であるからこそ、表面的な美しさの内部に感動が込められているのだろう。アイヌ民族、開拓者、囚人、多くの移住者の深い人生に思いをはせると、それらの人々を見守った森林風景は一層、輝いて見えるようである。