マンション中庭の造園

石組みと植栽
 石組みには砂、コケが似合う。いずれも、地面を低く被覆して、石組みを際立たせるからである。中庭は日照に不足し、土壌が貧困であったためか、コケが生育していた。また、柱を雨が伝って落ちるところは、侵食されて裸地となっている。しかし、裸地やコケの間にはハルジョオンが侵入し、疎らな模様でコケを駆逐していこうとしていた。石組みが地面から突然突き出しては唐突であるが、幸いにも根占となるシダが生育してきた。
奥よりの全景
 中庭は縦に長く、横幅が狭い長方形であり、片側が通路となっている。石組みをを通路沿いに眺めるなら、いくつかの石組みごとに構成される場面の眺めが連続して変化する。一方、奥から、あるいは入口から縦に眺めると全景が見通せる。これを総合化すれば、場面によって構成された全景が形成される。そこで、各場面を特徴づけ、全体が連続する構成を考え、特徴づけとしての植栽を設定した。
手前、ジャノヒゲとヤブランの植栽
 入口の裸地には、全景を見通す場所で、明るい部分であるので、緑濃いジャノヒゲを地被として石の根占をヤブランとした。
ユキノシタの植栽
 次の場面は、コケの開いた裸地にハルジョオンが侵入しているところであるが、ハルジョオンを掘り取り、そこにユキノシタを散在させた。コケの間からユキノシタが群生している景色である。
ヤマアジサイの植栽
 中央の部分は大きな石組みがなされているが、上の支柱からの雨滴で裸地となっている場所である。大きなヤマアジサイを配して、深山の渓谷の趣となる。
ギボウシの植栽
 石組みとヤマアジサイを正面にして、上の支柱からの雨滴で裸地となっている場所には、砂利を敷き、手前にギボウシを植えて、水辺の趣とした。
オシダの植栽
 中庭の奥は暗くなり、石組みはコケとシダの中にある。暗さの点では深山の趣があり、これを強調してオシダを植栽した。全景は奥から出て行く場合に、暗い場所から明るい場所へ、山から里への全景を見出すことが出来る。
 さらに、中庭全体を林間の空間するために、コウヤマキの下層の木として広葉樹の低木を植栽し、木漏れ日の空間を演出していく必要がある。