地域景観協議会

はじめに
 景観法の施行とともに、地域に景観協議会が発足した。3年前のことである。協議会の主幹は各地方事務所の住宅課である。長野県の景観行政は冬季オリンピック、長野開催を契機にはじまった。すでに、バブル経済が終焉した時期で、期待された観光産業はその後、衰退に向かってしまった。屋外広告が乱立した景観は改善され、オリンピック開催のためのサイン計画も行われた。しかし、景観の改善は景観を悪化させている原因の一部を除去するに留まり、また、沿道の花壇などによる修景に留まった。
 商業的な広告、沿道への商業施設の進出、安価な施設建設は、集約的な土地利用は、あるいは粗放な土地利用は、経済性追求の必然的な結果であり、都市計画法建築基準法屋外広告物法などによる規制が、最低限の生活環境確保に留まるものである現状の改善は困難であることは間違いないことであろう。かえって、規制緩和への要求が浮上する可能性もあったであろう。
 しかし、景観行政が曲がりなりにも持続してきたことは、放置されて混乱した景観を問題として取り上げた点で意義あることである。地域の背景となる自然景観、地域の長い歴史によって培われた農村景観は、良い景観であり、良い景観を損なう要因が悪い景観をもたらしていると仮定すれば、良い景観への意識が高まることでもある。自然景観や農村景観は、変わらぬ環境の一部として無意識に享受されてきたものであろう。

環境と経済
 陽光や大気、水や大地の自然環境は、不変なものと考えられてきたが、工業文明によってその考えは覆された。生活は工業の生産性向上によって経済的に上昇したように見えたが、生活環境は、自然環境の改変によって生存の危急な状態へと変貌した。生活の経済的な格差が生じて、環境悪化は生活困窮層に集中することにもなった。こうした事態への改善もなされたが、基本的な構造は変わらずに、世界中に工業文明が広がり、この貧困と環境の危機は地球規模に拡大している。
 地域の景観問題も環境変化の激動と関連している。すなわち、日本の工業化は、農林業の衰退に及び、農林業の衰退が、自然景観、農村景観の保全を困難にしている。地域景観協議会でも、農林地の放置による雑草繁茂や森林育成の停滞が景観悪化の問題とされている。

景観と環境
 景観の変化は、環境の変貌によってもたらされる。景観の持続を図ろうとしても、環境の変貌は景観の持続の条件を消失させている。沿道に花壇を設置して美化、修景することも、沿道の農地や森林が放置されて、雑草が繁茂し、森林が藪の密生地となっては、何の効果もなくなってしまう。市街地の街灯も市街が衰退していては、その効果は減退する。
 こうした環境変貌に景観改善は新たな対処を必要としており、景観を通じて、環境改善への努力と、経済への配慮を必要としている。景観は環境の状態を表わすものであり、景観によって環境変貌の状況が把握されるといえる。環境変貌の状況に合わせた景観改善と環境変貌による生活低下の改良を考える必要がある。