冬木立

はじめに
 秋の紅葉が枯葉となって枝にしがみ付いているかと思えば、強い寒気の朝になると、落葉となって地面を覆っている。樹林は陽光によって明るくなり、落ち葉とともに暖かい。木立は空に美しいレース模様を描いて、軽やかに天空に樹冠を広げている。風に動じることもなく。虫の声もやんで、静寂な世界で、無限の時間が持続するようである。それぞれの樹冠は広がりと支える幹と枝によって個性に満ちていて、一種の賑わいを見せている。

 この冬木立は落葉樹林特有のものである。関西ではコナラやサクラやカエデがあっても、照葉樹やアカマツ、スギ、ヒノキで目立たない。北海道や信州や山地帯の森林に触れたとき、冬の木立の美しさを始めて体感したが、美しいというより、その模様の楽しさだった。北海道の半年近い雪の季節、白い地上と青い空に対比する樹林の黒い模様は、寒さを和らげるように感じられる。