地域景観のための景観データ

はじめに
 地域景観協議会が広域圏単位で設置され、景観形成の推進が図られてきた。住民の景観サポーターや協議会形成する団体の参加者に景観形成の経験が集積し、地域間の協力関係は進展している。しかし、知識としての蓄積は、年次報告やニュースのパンフレットに残るだけである。行政団体の職員は入れ替わり、経験の継承も断絶しがちである。 一方で、道路建設、沿道の建築物の増加、住宅団地の開発、農地における農業動向の影響、森林の放置と成長などの景観変化は著しい。こうした変化の要因は、景観のある時点を、固定的に維持しようとすれば、その変化は景観破壊である。例えば、わら葺屋根を固定しようとすれば、その改造は、文化的景観の破壊である。しかし、変化を生活向上における景観の向上と受け取れば、古い老朽化した家屋が、現代的に住みよい住宅に代るということである。
 しかし、景観データを写真とすれば、ある時点のもので、継続して写真を撮り続けないと、景観変化に即応できない。景観協議会では景観変化を景観破壊とならにように、規制やモデル提示、住民の意志決定の尊重などによって、誘導しようとする組織といえるのであろうが、景観を無秩序なものに見せる屋外広告物への規制や撤去、景観住民協定の支援などであった。文化財保護や都市計画、農業地域の保全、観光などの行政とは無関係であった。景観データの収集は、景観協議会の問題ばかりでなく、地域構想が、景観変化の要因にどのように反映していくかの問題に結合している。

景観データ
 市町村ごとに景観計画のマスタープランが作られ、そこでは、景観の骨格を把握して、目標となる景観の将来像を提示している。マスタープランは、景観を景観要素に分析し、地域を地区空間単位に区分して、地区の空間的特長(景観要素の偏在)を明確にし、それら地区が地域を構成するものとして構想を示している。景観データをこのマスタープランから抽出するとすれば、景観要素であり、景観計画を構成する最小空間単位ということであろう。
 地理学においては景観は地表面の状態としてとらえられ、景観の要素や空間単位の区分は基本的な分析方法となっている。景観特徴と景観変化の構造とその要因が、地理学における問題であろうが、実際の生活空間では、景観を有効に生かして変化するために評価が問題である。良好な居住住環境、自然環境、文化環境の保全、景観を産業的に利用する観光などの目的によって評価が相違する。景観は評価によって景観資源として価値づけられる。景観データは景観資源のためのデータといえるであろう。

景観協議会の景観データ収集
 景観協議会では景観データ収集の組織を作り、その発足のための会合がもたれようとしている。景観データに関する取り組みを明らかにし、景観データ収集の目的と方法を見出していくという、協議課題が取り上げられている。収集と利用の作業体制、利用方法は次の課題である。利用に対する需要が景観データ収集の最終的な目的といえる。景観問題を協議会内部から、地域住民の共同の問題へと広げる上で、有効な方法となることを期待したい。