広域地方都市のコミュニティ構造

はじめに
 広域合併の推進とともに、広域地方都市が各地に成立した。合併以前の市町村の自治体の経済基盤の衰退がその背景にある。合併によって、都市の拡大とともに、以前の自治体を包含する新たな自治組織が出現した。既に、都道府県の下位の地域として自治体の連合組織として広域市町村圏が成立しており、その圏域内部に中核都市を中心にした広域地方都市が出現することになった。広域圏における広域地方都市と小町村との不均衡が生じており、また、広域地方都市内部における、自治組織の整備の問題も生じていることが考えられる。
 松本市の場合、区域の広大化、包含人口の増加が生じた。行政組織も以前の市町村職員が広域都市の職員に吸収されている。数度の合併によって拡大した松本市は、旧町村を地区として組織づけ、現在、35地区に至っている。合併市町村も1地区と位置づけられている。地区を構成するのは町会であるが、町会は400〜500に及んでいる。
 自治組織として地区を見るとき、町会が最も住民生活に近接しており、地区は町会の集合体である。しかし、合併町村で住民の自治意識が持続しているならば、地区は単なる町会の集合体とは言えないだろう。地区の自治意識が持続しているのは、村部と旧町村の地区である。都市部、市街地では、町会が近隣共同社会として自治機能を発揮している。

コミュニティ活動
 農村における集落共同体、都市の自治会、自治体自体は、社会組織としてコミュニティと総称される。しかし、コミュニティを構成する農民、住民、市民の自治意識の強弱は相違し、時代によっても変化していると考えられる。自治意識が薄弱となることは、個人主義への転換となる。経済社会は、個人、法人の自由な活動の場であるが、社会的な活動は、共同意識による共同体社会すなわちコミュニティが必要となる。統治組織としての行政体を、自治体と呼ぶが、住民自治のための共同統治の場なのか、国家の権力的な下部組織なのかは、住民意識に関わることである。
 住民の自由で自主的な活動によって、様々な団体の集団が形成されてくるが、コミュニティ内部の活動か、その範囲を越えた活動かの相違がある。コミュニティの一環で作られたのが、公民館活動である。