地学景観の眺望

はじめに
 先日、南アルプス世界遺産の資源評価項目検討の会議に集積した。自然科学と自然景観・共生に分かれ、自然科学は地学と生物(植物・動物)で構成された分科会で検討がなされた。それを総括した全体会で、地学の分科会の結論は、論理的で南アルプスの地学的な全体像と特徴を的確にとらえるものであった。その中で、ナウマンがフォッサ・マグナの着想を得た地点を重要な評価要素として取り上げていた。日本の中央を二分する大構造帯を見出したノウマンの地学者としての洞察力に感心した。地殻変動を表わす地質、その地質に刻まれる侵食と堆積による地形形成はまさに、景観の骨格であることは間違いない。その地形の地表を植生が被覆し、その植生を地形形成が作用して、破壊と回復をもたらし、さらに、人間が作用することによって、地形改変と植生変化をもたらすことになる。景観は地表面の状態であるから、植生の状態が目にとまるが、植生の生育条件が、土壌と気候条件に影響され、地形と土壌、地形と気候の関係を通じて、地形が植生の状態に影響している。山塊の地形は、山系と水系によって、系統的に(樹枝状)に区分され、景観を構成する。山塊と渓谷が、大規模で長時間の地殻変動を示しているのであろう。