生活環境の知覚における風景

はじめに
 風景は見る人と環境の知覚の中に成立している。風景の知覚は視野に成立する絵画的な構図であり、その構図を構成するのは環境の事物を要素に分類し、要素の構成に絵画を意識することによって統一的に構成しようとする意識の作用といえる。見る人は生活のために行動し、環境を知覚し、その体験を記憶に蓄積し、記憶を手繰りながら、注意し、知覚したものを判断する。判断するとともに、環境を認識し、行動してする。行動しながらの場合、その知覚と判断は一瞬であり、判断はつかない場合は行動を停止して思考する。

環境の風景要素
 環境は自然のままの条件と、人間によって作られた人工的な条件がある。人工物は自然環境を生活目的のために改善しようとして生み出され、自然環境が人工的に改変される。生活を中心とした空間範囲では、人工物に取り囲まれた環境となる。しかし、人工要素の背後には、改変された自然条件が存在し、また、人工物の背景には自然環境が存在している。生活の知覚は、環境を人工と自然に分けて、知覚するだろう。
 自然そのもの、自然を背景とした知覚に、風景を感じることが多いのは何故だろう。自然を意識しながら人工物を見出すとき、人間が感じる意味を超えた自然に対比して、人工物の目的性が意識され、自然と人工の対比に遥かな隔たりや関係までを壮大な意味あるものに判断し、自然との一体感を感じるためではないだろうか。
 地上で生活する人間にとって、人工物は地上の改変によって作られる。これに対して天空は自然そのもである。広い眺望では、地上も人間の生活の広がりの彼方に自然が残され、人工の広がりの背景となる。地上の人の活動を遮る山、海などが遠景となって天空に連結する。