放置林育成への復興需要の影響

はじめに
 放置林に対する施業は、長野県において「民有林で実施された間伐のうち約8割がが切り捨てで、間伐利用の活用は進んでいない」との新聞記事を見て、何とも残念なことである。今後、東日本大震災の復興が進行していくことになっており、木材需要も増大することだろう。切り捨てている木材を搬出しておれば、5倍の木材を市場にだすことができるという計算ができる。
 しかし、現行の間伐と木材生産のための施業とは、その目的が相違していることが考えられる。現行の間伐は、放置林における環境悪化が問題となり、早急に対処するとともに、長伐期の施業を目指すものであるが、前回のブログのヒノキ林からもうかがえる。過密なヒノキ林は、林床が裸地化するとともに、林木が細く、根が張っていないために、樹高が高くなればなるほど、倒木の危険が増大している。一方、林道が到達できず、急峻な地形は搬出を困難としている。さらに、市場での丸太価格が低いために、搬出の労力をかけても採算が合わない事態があり、伐採木が放置されるのも納得せざるをえないのである。
 間伐木を搬出する条件は、機械が入る林道を設置し、大型機械を入れ、大量に搬出することであり、市場において木材価格が高騰することである。以前の索道による皆伐作業はこうした条件を満たしていたのであろう。しかし、その結果、大規模な皆伐の弊害が問題となり、軌道を修正せざるを得なかったことを忘れてはならない。間伐木が搬出できないために、資源が無駄となっている事態は、復興需要の増大を目前として見過ごせないことである。需要増が木材価格の高騰を招くこと木材搬出の好機となるが、被災地には支障となる。それを避けるために、外材への依存が増大することも考えられる。需要増自体は好機であるので、搬出しようとすると、生産性の向上のため、林道、大型機械、過重労働へと回帰することも考えられる。自然破壊とともに、森林育成への目的が見失われることになる。こうしたジレンマを早急に乗り越えることが必要であるだろう。