森林の成長と遷移

はじめに
 私たちは、戦後、草地から森林への劇的な変化を各地で経験した。ススキ草原はアカマツ林となり、アカマツ林はコナラ林へと典型的な植生遷移が進んだところも多いであろう。今後、山地帯では、モミ、ツガなどの針葉樹を構成した広葉樹の混淆林へと遷移が進むことが考えられるが、はるか以前に破壊された原生林の姿は明らかではなく、その原生林が回復するかも不明なのではないかと考える。
 草地や皆伐地でのアカマツの植林は、草地の遷移する林相を早期に実現する方法として、また、アカマツ林の下層にヒノキなどを植林する方法も、より遷移の進んだ林相への推進と評価できるかもしれない。高木類に森林の成立と、林木の成長は、新たな高木類の生育によって更新して林相を変化させる。植林は高木類を選択して森林を更新させる方法である。林学を学んで、林相と植生型として成立する森林が、同義なのか、相違するのか、未だに未解決である。

森林施業による林相
 森林施業は森林の中から有用樹種の成長を促進させ、収穫利用するとともに、森林を更新させる作業と理解できる。木材収穫のための樹種を植林して造られた人工林の森林成長とともに変化する林相は分かりやすい。何年生アカマツ林、あるいはスギ林など、あるいはアカマツ若齢林あるいは壮齢林などと表現できる。もっとおおざっぱに、針葉樹、広葉樹と区分することもできる。この人工林に対して、それ以外の森林は天然林である。天然林は生態的遷移の結果、生じるので、生態学の対象となるかも知れない。天然林は樹種の混淆、異齢林である場合が多く、林相を簡単に表現することは難しい。
 人工林における林相を森林構造の階層構造で表現する場合、高木層と下層の樹木層、林床から表現される。高木層はほとんどが人工林の植林した樹種であるが、下層や混生した樹木は天然生であり、林床は自然に生じた植生である。人工林も植林し、高木層を形成する樹種だけが人工であり、その他は天然生である。人工林育成の失敗による放置で、天然生林に回復する状態が生じると、こうした森林の林相を・・型として表現することは難しい。
 皆伐や一斉植林を伴わない森林施業も存在している。これは施業林とはいえるが、人工林と呼ぶのは難しい。択伐施業の森林を見るのは難しいが、天然林からの抜き切りは、古くより、各所で行われてきた。しかし、過度の採取によって低木林や禿山を出現させることになった。こうした森林破壊からの回復が、森林遷移を「生じさせる。遷移によって回復するであろう天然生林の姿が終局相とされる。森林の人工的な破壊がなかった状態の森林を原生林と呼ばれる。終局相の森林が原生林と一致するのかは、分からないが、森林回復の可能性として潜在自然植生と呼ばれている。

老齢林と天然林
 天然林は森林施業の見地からは、老齢過熟林として森林蓄積はあるが、生産性のない森林ということになる。天然林において、林木の破壊と再生が均衡し、木材を外部に持ち出す生産性がほとんど無くなるということであるがろう。これは人工林でも高齢林となり、成長が減少し、枯損などが進行すれば、生産と消費が均衡に近づく。間伐などの収穫は生産性が持続している状態を回復させる。森林蓄積から伐採量が減少するが、森林の成長が生産性を回復させ、森林蓄積が元の状態に充足させられる。天然林における抜き切りも過度にならない状態では、森林蓄積の回復に役立っただろう。