地表は生命の緑で覆われる

はじめに
 小さな中庭はわずかな陽光で生命を感じさせなくなっていた。雑草が侵入し、子供たちが踏み荒らして、裸地となってしまったからである。配置した石は地面から浮き上がり、無意味に配置されているようになった。小さな中庭は砂場と化して、石は格好の飛び石となっていた
 雑草を抜き、抜いた場所に僅かな植物を導入した。子供は植物に遠慮して立ち入らなくなり、コケの緑が回復し、シダが元気を吹き返した。春の訪れによってついに緑が復活した。
奥からの写真

奥からコケ・シダ、ヤマアジサイギボシ
ユキノシタヤブラン・ジャノヒゲの生育、ウスバサイシン、ヘビイチゴ

植物の力
 わずかな種類を少しづつ増やしていくに連れて、地面が覆われ、伸びた葉が岩を覆い、植物同士が、関係をもって、生命の世界が有機的な関係で結ばれる。空間に射し込む陽光は植物と一体となって生命の空間を作り出す。
 子供たちに目にしてもらいたかった空間が育ってきた。街で育ち、森を知らない子供たちにこの神秘な自然の一端でも触れてもらえればうれしい。子供たちが、入れなくなった中庭は、植物を感じる子供たちの優しさによって守られている。
 6月末になって、ユキノシタの花が咲き、さらにヤマアジサイの花咲いた。シダが茂り、コケは色濃くなって、砂漠はオアシスに変わった。ひとときの楽園を住民は楽しみ、中庭を愛しんでいる。縁石のベンチに鉢植えの花を飾る人もいる。上空からの光に照らされ、植物は輝いて見えているからであろうか。