景観計画の谷間

はじめに
 地方都市住民の長年の景観形成のための活動は、景観に関する住民意識を著しく高めていることを、駒ヶ根市景観計画策定委員会に参加して実感した。景観住民協定を締結した地区では景観保全の実効が上がっている。しかし、一方、協定が結ばれていない地区に景観を阻害する建物が建設されているということである。こうした地区を住民協定の住民は谷間と称していた。都市計画区域外、都市計画区域内の白地地域も同様であるという。
 こうして、地区によって景観格差が生じているようである。景観は産業の動向によって変化し、衰退も発展もする。人口の動向によって住宅開発と空洞化が生じる。景観の時間的変動と空間的変動が生じ、景観計画は住民を主体として、この動向を改善へと誘導しようとするものである。谷間を無くし、景観の高揚を生み出そうとするものである。しかし、谷間の住民は、谷を埋めようとするだろうか。