地域景観の個性

はじめに
 各市町村の概要には、その市町村の特色が書かれている。骨格としての自然環境、構成する要素としての産業・土地利用や生活・施設、歴史などであり、景観の特徴として、理想的な生活空間が示される。山紫水明、類い稀な中心となる景観などである。
 景観計画においては、理想的な景観が目標となり、保全し活かす景観要素となる。景観の広がりは地区の多様性を示すが、中心となる特徴がなければ、ばらばら区域の集合でしかなくなる。多様な区域が全体の景観特徴に向けて有機的に構成されているか、構成されることを景観計画の目標とするかによって、景観特徴は地域の個性を示す景観となる。

自然景観の個性
 駒ヶ根市の景観の個性はなんであろうか。天龍川による伊那谷の横断面を示すように、大田切川と中田切川に区切られ、東西の両側に戸倉山を中心とする伊那山脈と駒ヶ岳を中心とする中央アルプスに広がっている。中央アルプス山麓から天竜川まで広がる台地は河岸段丘地形の見本を示している。天竜川の東は伊那山脈の谷を集めた盆地を形成している。
 山紫水明の山は、駒ヶ岳であり、戸倉山であり、川は天竜川とその支流である。しかし、伊那山脈の背後に南アルプスが眺望され、二つのアルプスの見える町という標語が駒ヶ根を特徴付けるとされている。川は災害の危険が大きく、人々が馴染むのは、農業のために緻密な水路によって農地の広がりに一体となった水系である。台地上は大田切川と中央アルプスの小渓谷による水路網で覆われた水田地帯となっている。
 農村地域によって山地と水系が結合して人々の生活に結合しており、自然景観の個性は、農村地域が生み出している。東の盆地から山地の谷に広がる山村地域と西の山麓台地を灌漑する水路網による水田地域が天竜川を挟んで接合している。この農村地域が基盤となって自然景観の個性が生まれているのではないだろうか。東に南アルプス、西に中央アルプスというだけでなく、東に山村、西に水田地域が天竜川で結合している。その田園地域が山紫水明の個性となっているのであろう。

都市景観の個性
 地域の中で都市景観を構成しているのは人口が集中して、市街を形成している区域である。街路を形成し、建物が密集している。それらの建物は生活の基盤となる消費と生産のための商店街、工場地区を構成し、居住のための住宅地を構成している。市役所、文化会館などの様々な公共施設が住民生活を支えている。
 西の台地上の区域に赤穂町が設定され、その中心市街には明治期に都市計画が立てられ、街道の宿場町からの展開がはかられている。