庭園と花壇

はじめに
 園芸と造園の協力は大阪花博で見られるが、庭園に花壇をつくるのに違和感がある。花壇は洋風のもので、日本庭園には合わないからなのであろうか、ほとんど日本庭園で花壇を見かけたことはない。花壇ではなく野草園としててなら日本庭園にも見られのだが、・・農家庭では、座敷前の主庭の築山や植え込みと玄関前の花壇が家族の中で分担され、花壇は主婦によって作らていた。庭には菊などのように草花園芸は鉢で育てられている。
 園芸生産は花屋さんに花を供給し、生活を花で飾るのに役立てられる。花束、生花は切花で、一時的な装飾であるが、花壇は屋外で四季、建物や街路、公園を飾るものとなる。園芸生産は作物としての花卉の大量生産が行われている。その一部に花の種子や花苗が供給される。一方、造園材料としての庭木生産は産地があるが、長時間かかり、植栽は大きくなると、業者に頼まなくてはならず、造園土木の領域になるのだろう。

園芸による庭づくり
 一般の住宅庭の楽しみは、庭木、庭石、芝生などで構成された空間に、草花の彩りを添える園芸が加わることである。宿根草は毎年花を咲かせ、一年草は花苗を買って来て植え足して楽しみ、庭はたちまち豊かな草花で被われる。花木を導入し、壁にツルを這わせ、木陰を作り、そこにベンチをおけば、イギリス庭園が出来上がる。イギリス庭園はこうした園芸趣味から出来ているのではないだろうか。
 洋風庭園を造ることは、明治末から流行したようであり、それとともに花壇も造られ、洋風の草花が日本の園芸に加わったようである。しかし、花壇は縁石やツゲなどで縁取りされ、その内部に花の模様を作るものとイメージされたのではないだろうか。また、その模様や区画は整形的であり、整形式庭園の一部にあるようなものである。

自然風の庭園と園芸
 日本庭園は自然風、風景の縮小、抽象化の特徴を有することが指摘されている。イギリス庭園の風景式との共通点、中国庭園の自然風との共通点も有している。イギリス庭園の風景、中国庭園の自然の趣、日本庭園に、花壇は適応するのであろうか。
 イギリス庭園には花壇の区画を隠したコーナーを造ることが考えらている。また、前述のような芝生を野草園のようにして自然な植え込みを造ることもある。また、芝生のなかの花模様として、花壇の区画を自由な曲線を描かせることがある。
 中国庭園は区画が建物によって区切られので、一画をある種類の花の庭とすることがある。しかし、その花はボタンなどのような古来からの中国の花であることによって中国庭園にふさわしいものであろう。
 日本庭園にも古くより、野草園のような部分があり、野分の踏み分け道が楽しまれていた。イギリス庭園の野生芝生をはるか昔に楽しまれた。現代、洋風建築も多くなり、日本庭園を作る所がなくなっている。自然と親しむ住宅庭にイギリス庭園が流行する由縁であろう。しかし、変わらない日本の風景や文化にふさわしい現代庭の展開はないのだろうか。

風景を媒介とした庭園と園芸の関係
 風景は人工と自然の要素が含まれる。M村の社会福祉施設の前庭の造園計画で、人工施設が向き合って、残されたアカマツ樹群を生かした庭のロータリーがあり、そこで、花づくりグループが花壇を作っている。庭は樹木が混み合い施設の前庭に相応しくなくなっている点を改善するためのデザインを行っている。


 建物にとってアカマツの樹林は周囲の風景に溶け込む効果を発揮している。建物入口に向かってアカマツの樹林が前景の効果を発揮するように、下層の混み合った樹林を透かす必要がある。また、入口から庭に向かって、アカマツ樹林が程よい距離で見えるために、前面に芝生の広がりがあることが必要である。アカマツの根締めとなり、芝生と樹林の縁取りとして潅木群や宿根草の植え込みが変化を生み出す。芝生の中に潅木群が凹凸の変化をつくり、その凹部や芝生に模様をつけるように花壇を造ってはどうだろうか。これから、園芸の専門家と相談してみなければならない。
 アカマツの下層には、サクラが、そのアカマツ林の林縁の潅木には、また、芝生から森林への移行の自然変化の様相としてツツジ類やススキ草原を構成した草花が、そして、芝生の広がりと花壇の模様がというのは、小さな空間に実現可能であろうか。日本庭園の縮小、自然の切取り、抽象化の技法とも言えないだろうか。