松本の都市周辺林の概観

はじめに
 松本に住んで、市街周辺の森林を目に留めてきた。市街は東西南北に森林が見られるが、西と南は平野部に開口している。それぞれの場所に合った様々な森林が見られる。河畔にはニセアカシア林、山地にはアカマツ林が多いようである。アカマツ林にコントラストを持って、おそらくコナラが主であろう広葉樹林が見られる。近郊の集落沿いにはクヌギ林であるかもしれない。また、植林地が散在し、ヒノキ林とカラマツ林が見られる。山麓にはケヤキ林も見られ、神社林はほとんどケヤキである。
 これらの森林は地形と関連して成立し、尾根にはアカマツ林、谷に広葉樹林があるが、植林によって成立したカラマツ林、ヒノキ林、ニセアカシア林は、主には広葉樹林の中に散在しており、山麓に多いニセアカシア林はケヤキ林に競合しているようである。クヌギ林は城山、アルプス公園などの西斜面に多いようである。以上は全体を調査したわけではないので、今後、確かめ地図化してみなくてはならない。
 ところで、何故、概観するのかは、松本市街の背景が山地であり、その森林景観であるということ、その森林が遷移し、松枯れ病や過密によって急速に変化していこうとしている点である。こうした変化を観察し、森林の健全化の方法を検討することが眼目である。これまで、森林の公園利用から関わった場所が、何箇所かあり、アカマツ林、広葉樹林、アルプス公園、カラマツ林などの育成方法の成否と森林全体のなかでの位置づけも必要と考えている。これらの知見を緑の基本計画に結びつけることも必要だろう。

森林の現状と問題
 市街周辺の森林はアカマツ林が大きな割合を占めている。森林の農村的利用の衰退が、森林を放置させ、森林への自然遷移によってアカマツ林を成立させたと考えられる。現在、山地のアカマツ林は市街周辺の景観を緑豊かなものとしている。しかし、高齢となったアカマツ林は過密状態が各所に目立ってきている。生活環境に近接して、倒木も生じて、危険性は増大している。加えて松枯れ病の蔓延によって、次々枯死木が生じており、その伐採処理の跡は林地を見苦しくしている。
 アカマツ林の育成がなされなければ、衰退し、下層の広葉樹林に転換していくことになるだろう。しかし、現状の過密な状態の放置は下層植生の生育を著しく阻害しているところが多い。

公園利用のための森林
 森林を含む都市公園は市街周辺山地に一画を占めており、また、森林が公園利用され、森林育成がなされているところが各所に見られる。山地の公園利用者の数も多く、自然環境との接触、健康のための散歩に役立てられている。

景観を構成する山地・森林
 市街に近接し、周辺を取り囲んでいる山地の森林は、遠景の山々と重なって、市民生活の背景となって市街の人工的景観の圧迫を緩和している。松本城からの景観は山地の景観に市街を調和させており、松本城自身も周囲の樹林と山地の遠景によって際立った美しさを持っている。

林業による森林育成
 松本市市街は周辺農村部に連続しており、農村部は山地と結合しており、森林の利用が行われてきた。いくつかの農村地区では、林業による森林育成が見られる。

生活環境と森林利用
 生活のための森林利用と森林育成による生活環境の向上の循環関係の構築こそ森林風致計画研究所が目標としているところである。しかし、こうした生活転換は急速には起こらないだろう。