景観の創造と保育

はじめに
 地域景観協議会開催の通知が届いた。毎年一回だけの協議会は1年間の計画の実績報告と本年度の計画決定のために開かれる。地域の8市町村の景観関係者と関係諸団体によって構成されている。景観協議会の萌芽的な組織は長野県冬季オリンピック開催をめぐって作ら、第5次全国総合開発計画の時期の景観法に基づいて整備されたので、歴史的な過程が生じているといえる。
 景観形成の方法は開発と屋外広告物に関する規制を主としており、景観育成では景観住民協定の推進が行われてきた。この住民協定の住民主体の方法は、現在、区域から地区へ、さらに市町村に拡大してきており、地域ブロックでの協議会の役割は減少していると考えられる。これは県と地域による景観規制から、住民と自治体による自主的な景観保全と育成への移行の過程といえるのだろう。

景観の保育
 ドイツ語には保育と翻訳される言葉がある。日本語の保育は幼児の保育に使われるが、景観に使われるのはドイツ語の訳だけではないだろうか。景観は自然の環境に人間が働きかけて創造されたものである点で幼児の保育とは相違するが、生み出された景観が維持され、人間の働きかけがその景観を育成する点では、幼児の保育と共通している。
 保育される景観は住民によって価値があるものである必要がある。そのような価値ある景観が創造されるかが最初に問題である。人々が開発する以前の自然環境に価値があったとすれば、その環境が損なわれないことが第一の景観の価値と言えるかもしれない。また自然環境が人々の生活の基盤となる点でも自然環境の持続は重要である。