中庭の自然空間

はじめに
 造園は自然の力を借りて戸外生活空間を作ることになり、人工空間でありながら自然環境を作り出す。造園空間の管理は人工空間の自然環境を維持するために人工的な管理を行うことになる。庭園の中で自然の変化に対して人工の再現が常に行われることになる点で、自然の再現とは言えない。自然は人工の手を離さない限り、自然環境とは言えない。

中庭空間
 中層集合住宅の中庭は住民にとって自然の広場、オアシスとなりうる。しかし、自然環境は陽光に限られている。しかし、その陽光は林内の環境に類似した条件を作り出し、コケの生育には適していた。高木の成長によって日陰が大きくなるの連れて、植栽していた低木が衰退し、裸地となり、そこにハルジョオンが優先し、その除草によって裸地の状態が助長され、一部にコケが繁殖してきた。

 2年前にハルジョオンの繁殖を抑えるためにユキノシタを植え、裸地の被覆にジャノヒゲとヤブランを植栽した。雨越智の部分には砂利を敷き、その縁には植栽し、岩石の縁にアジサイ、シダなどを移植した。高木のコウヤマキは切り込んだ。

自然の回復
 現在、植栽した植物が育ち、ハルジョオンの除草の手間は必要なくなった。それとともに自然に侵入する植物が生育し、自然のままの空間が生まれてきた。中庭はその枠の中で人工の管理を必要としなくなり、住民の生活空間でありながら自然の空間として成長し、変化するものとなった。コケ、シダ、草本、低木層、高木層によって森林内の環境が成立している。