駅前の明暗

はじめに
 北九州市は5都市が合併してできた都市である。その中心は新幹線の駅がある小倉であろう。新幹線小倉から在来線で戸畑までやってきた。戸畑駅の正面を出ていつも来た駅前の様子との違いに驚いた。あわてて船着場に行くにはどうすれば良いかと道行く人に聞いた。駅の向こうに洞海湾の船着場があるということで、出てきたのとは反対の駅側に出てきたが、子どもの遊ぶ草原のある様子に時代も変わらぬかっての駅前の様子に安心した。
 
 駅の裏表は地下通路で通り抜けができ、裏側には駅への入口がどこかもわかりにくい。かっては裏側が駅の表口であった。それは若松に向かう船着場があったせいなのである。船着場は若松と戸畑をつなぐ重要な通路で賑わった。今は若戸大橋洞海湾にまたがり、船着場の利用は激減した。以前は戸畑から小倉への路面電車も通じていた。
 
 戸畑駅の表口は小倉から八幡の幹線道路に面している。若松は石炭の積み下ろしの中継点としてかって繁栄していたのであるが、石炭利用の衰退から沈滞し、交通の流れからも切り離されて、合併5都市の中で最も沈静化した町となってしまったのである。渡し船の沈滞はその象徴であり、戸畑駅の表口は反対側に変わったのである。

表裏の現実と過去
 駅の裏口が過去の戸畑で表口が現在の戸畑の様相を示している。しかし、その明暗はどちらにあるのだろう。現在は過去からの進歩であると考えられることを通常とすれば、明るい現在と暗い過去となる。しかし、厳しい日差しの中で現在は親しさを感じさせない。過去の名残は思い出に浄化されて懐かしさとなる。そして、現実が進歩なのかと疑問を投げかける。過去の繁栄は二度と戻ることはないにも関わらず。