景観計画の基盤

はじめに
 景観は年々変化している。森林の放置と成長、農地の減少、住宅地の縮小、市街の空洞化などが目に付くことになった。この原因は農業の衰退、人口の高齢化と減少、経済活動の停滞によるものであることは間違いないだろう。
 景観計画は、これまで、景観悪化を防止することを主として、土地開発行為、建築物の拡散、屋外広告の乱立、電柱電線の乱立の規制と是正を主眼にし、住民の生活環境を主にした景観保持を推進してきたといえる。
 これは、経済が成長し、人口が増加し、住宅地開発が必要とされた時代に即応している。しかし、この時期にあっても、森林は放置され、農地は縮小しつつあった。それは農村の生活スタイルの都市化と都市への人口流出によるものだった。

景観計画の転換
 景観の規制措置を主として行政主導で行われてきた景観計画は、景観発展を支えてきた要因が、景観衰退をもたらす要因へと変化してきた点で、転換が迫られ、住民主導の景観計画に移行するように見える。
 しかし、住民の景観保持の活動が、今日の景観変化にどれだけの力を発揮できるかは、住民生活の人口減少、高齢化、収入減少による弱体化の中では疑問がある。一方、開発による既存景観の破壊の進行が停滞してきたことは、既存景観を保全しながら、開発を誘導する景観計画の可能性が生まれてきている。
 新たな景観計画の方法の模索と住民と行政との協力が必要とされている。計画推進の条件は、経済活動の再生と景観計画を両立させることであり、少ない力を重点的に発揮させることであり、既存の環境を保全し、活用することであろう。このためには、住民の生活スタイルの再構築も必要とされるだろう。