景気とは

はじめに
 なんと古き良き卒業生から景気が低迷しているので、自分の仕事ができると作品の写真を送ってきた。安藤広重の風の模型ときた。風雨に逆らって道行人、風雨に押されて駆ける人が橋の上とたもとにいる。風に柳がたなびいている。これは何を意味しているのだろう。単なる景観なのだろうか?景気は風であり、人々は風に右往左往している。確かに景気は風のようなものかもしれない。
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 景気の話をおいて、風は方向を持ち、強弱がある。風は虫を含み、それがイナゴであったなら古代の中国では大災厄であったろう。風は孔子詩経の中で国風として各地の歌謡を集めたものであった。国風は各地の歌謡の様式、特徴を示すものであったろう。それで、景色と結合して風景という言葉を構成するが、風景は様式を持った景色ということができる。風景が各人で相違すれば各人が作り出す様式があるのだろう。

景観から景気
 景気と景観が広辞苑では同義で示され。景気の文例は平家物語の中にあるとのことである。同じ頃、景色は気色で使われ、気は怪に通じるものでもあった。やがて気が景となって景色となれば、景気は気と気で重複した言葉である。こんな揚げ足とりに大した意味はなかろうが、景気は景観から人気を表す言葉となっていく。現在の経済の変動による刻々とした動向は、英語ではビジネスでしかなく、ブームという言葉も該当している。

景気を契機に
 契機はドイツ哲学におけるモメントという言葉に該当し、辞書を引用すれば、「要素(エレメント)が素材的要因であるのに対して、モメントは物事の動的要因となるものであり、ヘーゲル弁証法の用語としては、全体が弁証法的運動である場合の必然的な通過段階をいう。」となる。契機は経済のモメントと考えれば、その変動は経済の運動の必然的な通過段階ということになる。
 株価の変動が日々報道される。株の取引というビジネスの結果であり、株の需給で株価が変動する。株価が高騰すれば、投資が増大し、仕事が多くなる。しかし、低迷は投資が減退し、仕事の減退、生産活動、産業の衰退につながる。しかし、こうした日々の変動によって経済はどこに導かれているのだろう。
 卒業生は社会人となって、結構したたかである。経済の低迷による仕事の減少は、時間の余裕が生まれ、自分の仕事にとっては仕事ができる契機となっている。マイナスと思われた契機は受け止め方となる新たな契機によってプラスとすることができる。

景観と景気
 景観が明治になって地理学のランドシャフトの訳語として作り出された言葉であることは周知のことであるが、産業による土地利用が景観変化の動因となり、農林業の衰退が、遊休地、放棄地を生み出している。この景気の動向に対する景観のマイナスをプラスに転換する契機を見出すことができるはずである。直接的には自然環境の開発が抑制されている。長い経済の低迷は森林の蓄積を増大させている。しかし、この状況は経済の上昇期待によって安定していない。経済の安定と生活環境の保全、育成を両立することができるならば、自然環境保全重視への転換が可能となる。話のオチで、やっと、景気に景観が関連したが、大して強引だったかな。