造園の価値観の相違

 公共施設の前庭の修景整備の計画が完了し、見に行った。事務長は管理に様々ん意見があり、どうしたら良いかと判断を求めた。サツキの群植を刈り込むことを造園業者が推奨し、丸い整形的な刈込に多額の費用が算定された。また、花壇を作っている園芸グループから、樹木の寝際の草地がドクダミに覆われているのを除去して園芸植物を植えたら良いという。上役の会長は見通しのために、大きなアカマツの群生の下層のサクラを見通しのために除去すればよいのではなおかという。造園業者は大きなツバキを円筒形に刈込み、ナツツバキのとの間隔を開けるとよいという。
 修景整備の目的は繁茂した前庭の樹叢を際立った3本のアカマツの群生を生かし、そこに調和する樹木を残し、邪魔な樹木を除去することによって、修景してその木立を中心に残し、林縁に潅木を配するように集め、道路に面した周囲を芝生の広がりをもたせるものであった。建物の前景として人工の道路から自然の木立へと視線を導入し、また、施設への導入路として建物の見通しに樹林が重なる景色を構成し、建物の印象を自然とマッチさせる。
 一つの造園の場の関係者によってそれぞれ環境改良の価値観が相違している。整備以前の環境で、職員が草刈や、潅木の刈込、大物は造園業者の刈込、また、施設の利用者による植栽、園芸グループによる花壇の育成などの作用によって混ぜんとした樹叢の前庭が維持され、入口の見通しを妨げていた。見通し良く、自然の樹林を浮きだした整備は、草刈や潅木の管理をやりやすくし、花壇を芝生に区画を定めて設置し、アカマツの自然の樹叢にマッチさせた整備の価値観を堀崩すような考えが、再び混ぜんとした景色に傾いていくことが感じられた。多くの人が関わる造園空間が時間とともに雑然としてくる理由は、関係者の自己主張が作用している。