緑陰の効果

はじめに
 厳しい日差しの中の散歩は汗まみれとなる。熱せられた地面に風も熱波となって苦しい。こんな時に散歩する人はいない。しかし、家の中も外気の暑さで冷房に頼らざるを得なくなる。夜までも昼の暑さが残る。
 そんな時、果樹園の中に残された1本の大きなイチョウの木は、緑陰の偉大な効果を発揮している。厚い木陰の下は地面に濃い影が投じられ、その下はどんな日射も通さない。上空の涼しい風を木陰に導き、熱風も涼風に替わる。
 谷間の散歩道の両側には竹林があるが、道まで木陰は及ばない。竹林は密生して林内を風は通らない。湿気を帯びた空気は熱せられて、蒸されて、風が吹き抜けていないと、とても不快である。樹林は案外に緑陰の効果を発揮していない。
 市街地はヒートアイランドとなり、その緩和を僅かな緑化に期待されている。しかし、市街地の街路樹は今の時期、熱気によって息絶え絶えで、緑陰の効果どころではない。
 松本にはあがたの森という公園が市街地に隣接している。公園内に大きなヒマラヤスギの並木があり、その下は暑い日でも涼しさが感じられる。ただ、日陰を作り出しているだけでなく、地面の強烈な熱気に木陰を通して上空の冷気を吹き込む効果があるのではないかと想像している。
 街路樹ももっと高く、厚い木陰なら、自分を守り、人々に涼しい緑陰を影響できるのではないだろうか。そのためには、広く根を張り、樹冠を広げる空間と地面が必要となるだろう。

森林の緑陰効果
 森林は高木層の樹冠によって林内の緑陰が生じる。その緑陰の下で下層の植物が生育しているが、緑陰が下層の植物の生育を抑制している。緑陰の隙間がなければ、下層の植物の生育も難しく、高木の樹冠を広げることができなくなる。すなわち、密生した樹林は前述の放置された竹林の状態そのものではないだろうか。