経ヶ岳自然植物園の風致間伐

はじめに
 経ヶ岳自然植物園の開設から相当時間が過ぎ、林木が成長して、次第に林冠が閉鎖している。草地の広場にはススキ草原を構成する野草の宝庫であるが、上層の閉鎖で狭まる可能性がある。草地はエドヒガンザクラが数本とシランバの樹林があり、広場に面する南斜面はアカマツ林となっているが、カラマツ林がその横側の東斜面にあり、尾根を越えて北斜面に広がっている。
 自然植物園の眼目として各林木の自然樹形を際立たせることが間伐の一つの目的であった。モミは末広がりの円錐形の単木の樹形が良く、シラカンバは上に伸びる幹と枝が林立した群生が良く、アカマツは数本の樹冠がつながった群によって、幹と樹冠の大小の組み合わせが面白い。そのアカマツ林には下層の広葉樹やツツジやハギなどの潅木と組み合わさり、変化と調和が一体となっている。カラマツ林は閉鎖した森林は枝が枯れ上がり、下層がササで単調となっている。
 また、植物園の観察には多様な種の存在が必要であるが、自然植物園は植物を収集して展示する植物園とは相違している。多様な種の生育には様々な遷移系列が重層することによって、多様な種数を成立させることができる。草原から森林へと遷移してきた植生に人工植栽を加えた現状が持続するために、植生の管理が必要とされる。シバ草原からススキ草原、ススキからアカマツと広葉樹の混生林、アカマツ林から広葉樹林、さらにモミ林への移行段階、人工植栽によるサクラ、カラマツ林、ヒノキ林と多様な植生を維持するために、下刈り頻度、間伐密度などを調節することが大切である。また、選択的に育成や除去も行う必要がある。

自然植物園の風致間伐
 過密に放置されたアカマツ林の間伐は難しい。個々の立木が樹冠が小さく樹高に対して幹が細く、個々に自立が難しいからである。これを克服するために、小面積画伐によって郡状に立木を残すという方法である。3本以上、5本ぐらいの群によって残すと、樹冠が連結した群の立木が配置された林ができることになる。