森林風致研究所の活動領域

はじめに
 2007年にNPO森林風致研究所が発足して以来、何を活動領域として社会に貢献できるか、社会的要請はどこにあるのかが、総会の度の議論であったが、7回目の総会の時期が迫っている。
 研究所の設置目的は定款にも掲げているが、この6年間に研究所で実際の活動として行ってきたことは、造園設計、自然公園の環境保全、景観計画、森林風致計画、環境基本計画で、委託は公共団体、環境省自治体、公社からであった。
 これらの活動は研究所の看板である森林風致計画と直接、間接に関連していると考えたために、引き受けたものであり、「森林」の現状が課題となっている。森林の現状は森林資源利用がなされず、林業が低迷し、森林の放置によって森林環境、景観が悪化し、生活環境として利用されないことが問題となっている。

森林の現状打開への対処
 環境計画は都市環境の悪化への緊急な対処であるが、森林環境の悪化と関係している。都市的な土地利用によって森林が失われ、都市砂漠が出現し、そのための緑化が必要とされている。都市拡大、過密化の同時進行は、都市への人口集中によるものであり、それは、住宅建設などによって木材利用を増大させるものでもあったが、外材の輸入、代換材の導入によって、国産材の需要が低迷し、林業の衰退を招いてきた。これを環境重視の政策によって傍観しようしたのが、森林政策といえるのではないか?
 現在は、これまでと大きく変わって豊富となった森林資源を活用し、木材需要を意図的に増大させようとする森林政策、木材政策が打ち出されてきている。そうなると、森林環境の危機がより以上に深刻化する可能性がある。
 以上の現状が様々な問題となる点で、研究所の活動から直面したのであるが、活動の視点が、生活環境に呼応しており、森林と人間との関係に帰着している。森林が自然環境として評価される点で、問題は森林の側にあるのではなく、人間または社会の側にあるといえる。自然である森林を保持、育成するためには、人間、社会のあり方を考える必要がある。そのために、自らの生活の原点を人間、社会の現状批判の中に見出す必要がある。現状は人間と森林との関係が希薄となっている。この事態は戦後の経済成長とともに顕著となって行ったと言える。

森林との関係の構成
 森林に出かけ、観察し、森林資源の利用を行うことによって、林業現場の現状と木材利用の流通過程を把握し、再び、生活環境と森林との関係と問題を考察する。様々な問題は一連の森林と人間との関係、関係の断絶として再認識される。