林冠層と低木層

はじめに
林冠を構成しているのは高木層の樹冠であり、その葉のある枝による厚みは2〜3mほどであるが、これは低木層の高さである。







下層の低木層は高木層の林冠の隙間を縫って生育している。下の写真は高木層のニセアカシアの倒木によって残ったケヤキによって隙間のある林冠となり、下層にケヤキの幼齢の低木層が成立してきたものである。高木層のケヤキの密生によって林冠が閉鎖されれば、下層の低木層も衰退し、生き残る物はわずかであろう。


ところで、高木層の林冠は各高木の枝の群葉の集合であり、それぞれの群葉が競争関係にあって、せめぎ合っているようである。下方で陽光の照射の少ない枝から衰退し、枯死していっている。


林冠の厚み
 一本の高木の樹冠を構成する多くの枝は低木の集合で、それを幹が地上から持ち上げているようである。低木の高さは年々の成長に支えられ、その成長が一年間に20cmとすれば2mの高さとなるのに10年間かかることになる。高木の幹もその樹冠の成長とともに伸長してきたすれば、20mの樹高は100年となる。

林冠の密度
 一本の高木の樹冠が100本の枝の集合として、1本の枝が1㎡とすれば、1本の樹冠は100㎡であり、1ヘクタール当たり樹木の密度は100本であり、1万本の枝の密度となる。低木層が明るい林冠の下で繁茂する初期の段階の密度とほぼ一致するのではないだろうか。

低木層と草本層との関係
 草原は遷移して森林となっていく。草原の草の密度はどれくらいだろう。数年放置されたススキ草原で、ススキの株が分かれて分布している。一株が1平方メートルとすれば、1ヘクタール当たり株の密度は1万本となり、低木層の密度とほぼ同じである。ススキの株の間には様々な草本類が入り込み共存し、樹木類も侵入してくる。樹木類の成長によって低木の森林が形成され、草本層との地上からの分離が生じる。低木林の繁茂は草本層を衰退させながら、伸長していく。

まとめ
 植物層の時間的経過による成長は、空間的な階層構造となって示されており、自然の秩序を体験させてくれる。一瞬の体験から感じる自然の秩序は、単なる類推に過ぎないのだが、その存在を否定することはできない。どんな自然の秩序が成立するのか、その検証は科学的な調査が必要となる。