山地の地形と森林

はじめに
 松本市街に面した里山の山地の森林景観から何が読み取れるか?山地(土壌)と森林との関係、森林と方位(陽光)、森林の歴史と土地利用などの関係が景観にいかに反映しているかである。

山地の地形
 山地は山の稜線と谷の水系が互いに入り込んで構成されている。尾根が樹枝状に大から小へと伸ばしたものが、山の稜線であり、その稜線を境界とする流域の低部に水流れが集まり、それらを集めて支流から本流へと樹枝状に山の稜線に水系が入り込んでいる。稜線と水系の断面の斜面が山腹であり、水系によって山腹が浸食され、山腹の安定角を越えた急傾斜で土砂が崩壊する。崩壊によって山腹は湾曲して谷部を作る。
 森林は地形を被覆して、浸食を弱めるが、斜面の崩壊の上端部で、根系が抉られ転倒し、崩壊を拡大する。浸食によって生じる崩壊の断面は、U字の形を描き、斜面上部に拡大する。谷部では河川の河原に向かって土砂を排出し、谷の出口に小扇状地を形成する。
 山地の山ひだは特に斜めの光線に、陰影を際立たせる。幾重にも重なる山並みは背後の深い谷を示し、奥の山地ほど高い山並みを示している。


森林景観
 尾根がアカマツ林で山腹は南斜面もアカマツ林、または、広葉樹林、谷と北斜面が広葉樹となっている。北斜面の緑はヒノキ林、谷の緑はスギ林の植林地が見られる。これらは、冬山の緑と枯れ木立の灰色からの推測である。
 その地形に沿った森林景観は地形を強調している。森林のない所は伐採跡か、崩壊地かと気になってくる。山麓から平地の穏やかな地形に、農村集落と農地があり、そこに都市の拡大が及んで、建物に覆われて人々の作り出す土地利用区域となり、森林の緑はは農村部や市街では点在しているだけである。
 森林景観は人間の居住域の拡大によって、山地景観と一体のものとなった。しかし、その山地森林景観も森林利用によって形成されたものである。森林景観は季節によって変化するが、長い目で見れば、森林の成長と時代の変化との賜物である。