樹形と林相

はじめに
 長年、各所の森林を見て来た経験に過ぎないことであり、科学的根拠があることではないが、樹形と林相との関係について気がついたことを述べる。これが風致施業の実際に欠かせない事項であるからである。ドイツの最近の林業技術の基礎にも取り上げられているようであるが、全く、翻訳に取り組んでないので不明である、

 どの森林であっても、自然に任されて成長している森林には、樹形、樹高と樹冠の大きさ、形が全く同一であるような状態を見かけない。寺崎式間伐の樹形級区分である5段階以上に相違している。その結果、樹冠の日光の受け方が毎木で相違してる。また、樹冠が平面的、断面的に、相違しながら、森林を密生させている点では、風に対する防御効果が大であるだろう。競争と共存関係によって、森林を構成する樹木が成長し、枯死していくことが、森林の構造―林相を成立させていることになる。これを、間伐によって均一な林木配置に戻すと、成長による競争によって森林の衰弱を招くことになる。一方、そのまま、放置された天然林は優勢木が樹冠を広げすぎて、幹の通直な林木が存在しなくなる。

間伐の効果
 森林における立木の成長は林冠の閉鎖とともに、競争が激化し、優劣差が増大する。そこで、競争緩和のために、間伐が行われ、密度を少なくする。優劣差を拡大するための間伐と優劣差を減少させ、均一に持続するための間伐がある。量的に樹冠密度を緩和するには、どちらの間伐方法でも同じ率の間伐で行うことができる。しかし、優劣差を増大させる間伐では、森林内の競争を強調するために、次期の間伐の必要を減少させることができるが、均一な間伐では競争が再度、激化し、次期の間伐を継続する必要がある。
 優劣差を増大させて競争を緩和させる間伐は樹冠の立体的な相違を強調し、優劣差を定着させることによって優勢木の成長を確保し、継続的に森林の成長を促進させる方法といえる。

林冠を構成する林木の樹形変化
 森林を構成する林木は、樹冠とこれを支える枝、枝を伸ばす幹によって構成さされる。閉鎖した林冠で林木の密度が疎なだけ、樹冠が大きいと言える。林冠と枝は幹によって支えられるから、森林の高さは樹高の高さと一致する。林冠の平面的広がりと樹高によって支えられた高さが森林空間の大きさを作り出している。
 森林を構成する林木の樹冠、樹高は個々の木によって相違するので、樹高の最高値、樹冠の最大割合は優勢木によって支配されている。林冠の永い閉鎖によって、個々の木の下枝が枯れ上がり、林内の空隙が高くなるが、この高さが樹冠が光を受ける厚みによる点で、比較的平均している、また、優勢木の樹高も突出した梢が風障で損傷する機会が多くなり、抑制される。
 閉鎖した林冠は厚みをもって連続し、これを樹冠の大小の相違する林木に支えられている。個々の樹冠は競争関係によって相互に入り組んだ樹形を構成するが、優勢木ほど自然樹形を保つ可能性が大であるだろう。劣勢木は優勢木から被圧されて変形した樹形を示すことになる。


林床の生育