黄昏狐

聞くと闇 漢字は何と絶妙に作られているのだろう。門の中に耳があり、門の中に音があるとは!
昼夜によって明暗が逆転する。その境目に黄昏がやってくる。昏睡の昏とは何を意味しているのか?闇が近づくにつれ、陰影が失われ、色彩が失われていく。そして、黄昏の不可思議な黄色い闇に充たされる。暖かな大気が冷たい闇に換わっていく一瞬だ。その充たされた静けさを破って犬が鳴き立てる。何に向かって鳴くのか。
黄昏の中に犬の鳴き声が凝縮する一点が朧に浮かび上がる。
そこに浮かび上がったのは狐であった。そして、黄昏の中に溶け込み消えていった。夕まぐれに子供がいなくなるという。