コナラ林の林床と森林遷移

はじめに
 裸地が草原となり、草原が森林となり、その森林はアカマツなどの林が落葉広葉樹林となり、落葉樹から照葉樹林や針広混淆林となって、終局相に到達する。この定説に従って、林床を見ていくと、林床は草原の残存であったり、次代の森林の先駆であったり、林床の植生が森林の遷移を停滞させたりという関係がある。森林を構成する高木層が下層植生の生育条件を決定するだけでなく、林床の状態が将来の森林の姿を決定することが考えられる。

アカマツ林内の草原の残存
 すなわち、若いアカマツ林の下層はススキ草原の構成種が残存し、ススキ草原から遷移したアカマツ、広葉樹、潅木の混淆した低木林の構成種が見られる。アカマツ林の林床は、ススキ草原残存型から、潅木林型へと遷移する。目立つ植物から、ササユリ型からツツジ型への移行が考えられる。低木林からアカマツ林への遷移は、地形と土壌による立地によって、尾根などにアカマツが優占し、山腹、谷では、広葉樹が優占した森林に分かれるようである。南斜面にアカマツが優占し、北斜面に広葉樹が優占していると感じるのは私だけであろうか?
 やがて、アカマツの下層に次代の森林の構成種を含む低木層が形成され、アカマツ林から、コナラ林に移行する。しかし、アカマツが優占する森林、コナラが優占する森林が自然の遷移だけでできるかは、不明である。林床の植生利用のために、選択的な下刈りがなされた結果も反映しているかもしれない。下刈りは部分的に草原への退行として作用するだろう。閉鎖した林内の草原化は、ササなどの一様な植生の生育をもたらすことがある。
 アカマツ林の林床にアカマツの稚樹が生育するためには、上層木を相当疎開させなくてはならないだろうが、皆伐すればススキ草原がまず出現するだろう。アカマツ林が過密で共倒れ型であれば、早期に衰退し、競争して強弱によって疎開すれば、長命となるが、いずれ、老齢化して衰退する。そこで、アカマツ林は下層の樹林の高木類の森林に取って代わられ、アカマツ林の林床もより暗くなった林内の中では消失する。

コナラ林内の照葉樹林の先駆
 生駒山系のことであるが、コナラが優占してきた森林の林内は暗く、林床は腐食で覆われ、シダが点在する植生である。コナラの種子が豊富に供給されても、コナラの生育は難しいようである。林縁部では、ソヨゴ、ヒサカキが林床に密生し、落葉樹の進出を抑制している。ソヨゴ、ヒサカキは恒葉樹であるが、それが照葉樹林への先駆であるかは、わからない。シイ、カシ類の照葉樹林の高木類の進出は顕著には見られない。母樹からの種子の供給がないためであろうか?あるいは、コナラの樹冠の閉鎖によるものであろうか?コナラ林にギャップが生じた時に、照葉樹林への移行がすすむのであろうか?
暗いコナラ林の林床
 林床が、裸地状態のコナラの間伐は、ソヨゴなどの繁茂をもたらすだけとなるかもしれず、ソヨゴの繁茂を除伐などで、疎開させ、照葉樹林の導入などの段階的に対処する必要があるかもしれない。また、照葉樹林ではなく、落葉樹林への回復、コナラ林の更新も考えられるかもしれない。
コナラ林の林床であったソヨゴを皆伐