今田先生「森林美学」講義第11回

今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

2月2日

 

 

Gruenfflaeche 緑地(続き4)

 

児童公園 Kinderspielplatz

 子供のための公園 年齢に応じ,遊戯と運動を考える。年齢の区分は5歳以下の幼児,11,12歳以下の幼年,14,15歳以下の少年に分ける。幼児のためには遊び場と同伴者の休息場が必要である。幼年・少年は学校の敷地の隣にも分けることを考えている。

 

近隣運動公園 Bezirkssportplatz

 青少年及び大人の運動施設のある公園 公園的風致を伴う。誘致半径は近隣公園に準じる。1600m以内,または30分以内で行ける所

 

総合運動公園 Sportpark

 正規の運動競技のできる施設を持つ公園,この理想的なものは50ha必要である。

 

 その他,ゴルフ場,動物園,植物園,墓苑,自然公園なども都市緑地に入りうる。

 

都市緑地の基準

 これは状況に応じ,一様ではない。日本ではこの点で緑地が少ない。ドイツの例では人口一人当たり,20〜30平方米が必要とされている。アメリカでは人口50万人以下の都市の場合,一人当たり40平方米,50万人以上の都市は20.2平方m,100万人以上の都市は13.4平方米,但し,大都市では郊外の自然公園で補うようにしている。イギリスの例では20.2 32.4,28.3平方米など,様々な基準がある。また,アメリカの40.5平方米をそのまま採用している所もある。

 

緑地系統 Gruensystem

 都市の緑地はある全体に統一されて,十分な機能を発揮できる。それが緑地系統である。

 次のようなものがある。

  • 散財式 Streusystem

  点々と散在するもの,多くの場合これだが,相互の連絡がなく,緑地系統としては不完全である。

  • 環状式 Ring oder Gurtersystem

  これはヨーロッパに多い形式である。都市を取り巻く城壁などを取り壊し,その後を遊歩道にしたことから始まっている。近代になってからはこれは計画的になされた。

  • 放射式 Stren oder Keilsystem

  これは都心から外に向かって,放射状に緑地が配列されている。但し,街路が放射状の都市で行われ易い。ドイツのHannover,アメリカのIndianapolisなど。

  • 放射,環状式 Stern oder Keilsystem

  これは緑地系統として最も理想的なもの,2と3を合わせたもの。ドイツのKoeln,アメリカの都市に見られる。

  • 衛星式 Trabantensystem

  これも大都市に見られる形式で,規模の大きな放射環状式の中に,衛星都市が入っている。これは大都市の理想的なものである。これはドイツのFrankfurtdearu.

 

自然公園 Naturpark   natural park

 これはレクリエーションに供し得る自然の風景地である。但し,自然あっての自然公園だから,自然を保護することとレクリエーションに利用することが二本の柱となる。そして,この二つの比重の仕方は国によって異なる。大体,ヨーロッパでは自然を保護することを第一とする。スイスやスウェーデンでは自然を保護することが主になる。アメリカではこの二つが同じ比重で扱われ,二本ではレクリエーション的利用が自然を保護することより,比重がかけられている。自然公園の始まりは遠い昔に遡れるが,顕著なものは,1864年アメリカでヨセミテ渓谷とセコイアの森とMariposa grove をカリフォルニア州立公園としたことがあり,1867年,イエローストーンの国立公園に指定されたことである。

 現在,自然公園の内,国立公園は世界各国に見られる。1962年,アメリカ,シアトル市で第一回世界国立公園会議が開かれ,その時,26カ国が国立公園を所有している。英国,スウェーデン,ドイツ,ソ連オーストリア,スイス,イタリア,ベルギー,アイスランドルーマニアアメリカ,カナダ,アルゼンチン,メキシコ,チリー,コンゴー,タンガニカ,ケニア南アフリカ連邦イスラエル,オーストラリア,ニュージーランド,フィリピン,インドネシア,セイロンで見られる。それぞれの国で特徴があって,皆,同じように管理経営されてはない。

 其の内,アメリカ合衆国を例とすると,1960年の現在すると,・・・134553877エーカー,其の内20箇所は100,000エーカー(4万 ha)その他,国家記念物National monumentsとして,国立公園に準ずる区域が83箇所,9129,537エーカーある。また,国有林の中に保護地がある。それぞれが自然を保護する事とレクリエーションのために供されている。その中でレクリエーション利用が強く制限,禁止しているところである。それを自然域National areaと称している。

 

日本の国立公園

 昭和9年3月瀬戸内海,雲仙,霧島国立公園が指定され,同年,阿寒,大雪,中部山岳,阿蘇の国立公園に始まり,現在,23箇所である。昭和24年,日本の国立公園で自然破壊していると言う勧告を受け,制度上の改善がなされた。現在は昭和33年の自然公園法に基づいて,管理経営されている。この自然公園法は国立公園,国定公園都道府県立公園の三つを規定している。国立公園は日本を代表する風景地うぃ選定し,国定公園はこれに準じるもの,都道府県立ではその地域で優れたものを選んでいる。国立公園は国が指定し,管理する。国定公園は国が指定し,都道府県が管理する。都道府県立公園では都道府県が指定し,管理する。ところで,この自然公園において,自然を守る方法は最も厳格に自然を保護するために,特別保護地区を設け,また,ある程度の制限を加えて自然を保護しようとするものを保護地域とし,第一,第二,第三種に分けている。そして,原則的に制限しないのを普通地域と言っている。知床は自然を守るためにtp国注意されており,51.5%を特別保護地区,残り48.5%を第一種〜三種とし,保護され普通地域はない。(国立/国定公園面積一覧表)

今田先生「森林美学」講義第10回

 今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

1月20日

 

Gruenfflaeche 緑地(続き3)

 

前庭

  建物と 道路の間の緑地,これによって美化される。また,騒音を避け,風通し,採光もよくなるなど,美観,衛生,保安にも役立つ。このため,前庭線,後退建築線を都市計画上設けることがある。これは住宅地ばかりでなく,工場地にも望ましい。この前庭線の幅は例えば,道路幅50フィートで20から30フィート,道路60フィートでは30フィートのものを設けている例がある。普通の建物にも少なくとも3から10mの前庭が欲しい。学校,病院,ホテル,図書館などの公共施設には前庭が是非欲しい。前庭は柵の類は設けず,開放する事が望ましい。また,街路の並木と調和させ,建物の前面に蔦などを絡ませる前庭が欲しい。明るいローンが前庭の芝生地となり,そこに樹木を添える。

 

街園,広場

 街路の上に設けられる装飾的なものだが,実用にもなる。街園は道路の空地を利用した小さな場所を指す。これを設ける場所は街の一角などであまり広くない都市の緑地として美観を添える場合が多い。日本の都市が一般にあまり美しくないのは,広場がないためである。広場にはいろいろの目的がある。装飾を主としている場合は,装飾広場Schmukplatz,交通の便利のために設けられたものは交通広場,その他,ある建築物を主とし(教会など),記念物を中心にして設ける場合がある。あるいは集会のため・・・。レクリエーションのためなどの広場,また,市のための広場,災害のための避難所にもなる。広場はいつも集まりやすいことが要求される。その広さは周りの建物の高さから,2,3倍とされる。交通の著しい妨げとなってはならない。

 小さい広場はその中に入れないことともあるが,大きいものでは出入りができるようにするのが普通である。出入りできなくても,外から中を眺められるようにする。広場の形は整形の場合が多い。地面に凹凸がある場合は不整形にすることがある。整形の方が街路や建物に」調和するが,硬い形になるので,その中の植栽を自然風にして和らげることもある。多くの場合,陰を与える並木,装飾樹を植えるのが常である。

 

道路公園 Parkway

 これは道路を主とした細長い公園が道路を通りながら美しい風致を楽しむ。道路はドライブ,徒歩,自転車用に特に作られ,それらが並置される場合がある。目的はrecreation  また,これで公園などを連絡することがある。これを設ける場所は,景色が良くて土地の値打ちの無い所,湿地,河岸,傾斜地,崖地,海岸地など好んで設ける。そのような所は道路を中心に設ける・・樹林・・したがって,また道路公園の配置や形は不規則になるのが常である。Recreationが目的で近道が目的で無いから,風致の優れた場所を通るようにする。この幅は一定してないが,狭い場所でも30mくらいは必要である。広い場所では300m〜400mもある。

 

公園道路 並木大路 Boulevard

 これはフランスで発達し,並木や芝生などで飾られた立派な道路をいう。芝生,花壇,噴水,彫像などもある。形は様々である。この起源は19C後半で中世の城壁を取り除いた跡地を遊歩道Promnadeとしたのに始まる。18世紀後半になると市民が自然に触れることを好むようになり,盛んに散歩したので,遊歩道がますます作られるようになった。フランスの都市は広い並木と  ブールバールがあるのが普通である。パリの街づくりはナポレオン3世の時に行われたもので,公園,ブールバールなど後世に残る美しい都市となった。一般にブールバールは整形的式の並木や芝生を配置した幅の広い立派な道路を指す。これに反し,道路公園は樹木などが不規則な状態で公園を作っている。この幅は50m以上のものが多い。例えばパリのシャンゼリゼは85mの道路である。ベルリンのウンテルデンは60m,マドリードのパセロは85m,ウィーンのRingstrassetrasseは57mである。

 

近隣公園 District park

 近所の市民のrecreationとしての公園,この他,休息,観賞を主とした静的recreationを目的とする。これが普通に見られる公園で,誘致半径800mくらいが標準で遠くても1600m,広さは様々だが,理想としては5ha以上が望ましい。小さなものは1ha前後のものがある。施設は地域の要求に適応させる。居住地域,商業,工業地域に適応させることが必要である。運動施設は子供の遊劇場は設けるが,大人のものは設け無いのが普通である。広い場合は運動施設も設けるが静的recreationを妨げ無いように,はっきり隔離して設けなくてはならない。施設は真ん中に広場があり,その周りにその他の施設を配置しているのが普通である。このような配置を地割と呼んでいる。標準となる地割は3区地割である。⑴林苑区,これは園地の大部分を占め,ここに樹木を植え,池のような水面区を設ける。⑵中間区,普通言う公園の施設,休憩舎,・・・小植物園,⑶児童遊技場,小学生以下の子供を対象としたもの。

 

総合公園Volkspark large park

 市民全体を対象にした大きな公園,ここでは休息,観賞の静的レクリエーションと共に運動などの動的レクリエーションのための施設を設ける。そして運動施設も風致的に扱われる。・・・この景観も自然風に扱われる。ただし手の入った自然であり,自然らしく作られたものである。面積は大きくなるが,交通の路線,鉄道や主要な街路がこの区域内を貫通しないことが必要である。このような路線を避け,このような路線の間に介在させるか,それに面した所に設ける。誘致半径は1600〜4800m,車で30分程度の所を選ぶ。また,人口4万人に対して,40〜100haのものを一箇所設けるのが普通である。混雑しない自然が楽しめるようにする。地割は大体近隣公園に準じ,草地ローンの広場が大切である。自動車は中を通さず,必要があれば境界線に近い方を通るようにする。車の出入りする建物もなるべく縁に設ける。この代表的なものはパリのBois de Boulogne 846ha ロンドンのハイドパーク142ha ベルリンのGungfern hide 160ha.

今田先生「森林美学」講義第9回

今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

12月16日

 

Gruenflaeche 緑地 (続き2)

並木に必要な性質 

1 剛健な樹種

 都市の土壌は大抵痩せていて生育に適切ではない。客土もするが,剛健なことが必要である。都市の空気は有毒成分を含み,煤煙,砂塵も多いので,それに耐えなくてはならない。地下からのガスもれの怖れもある。これは極めて有毒である。土壌の乾燥にも耐え,幹の損傷する怖れも大きい。

2 衛生的樹種

 暖かな地方では緑陰を作り,冬は落葉するものが良い,熱帯地方は常緑樹良い。有毒でなく,悪臭藻なく,棘がなく,粘着性樹液を出さない物が良い。

3 成長が早く,刈り込みに耐える物が良い。成長の早いものは・・・で短命なものが多い。

4 なるべく美しい樹種

 木の形がよく,葉も美しく,緑が鮮やかで,花が咲き,実の美しいもの,むやみに萌え葉が出てこないものが良い。

5 なるべく,郷土樹種

 郷土樹種は郷土で抵抗性が強い。また,帰化木も郷土木と考えて良い。日本の400の都市の調査ではプラタナス,次にシダレヤナギ,イチョウである。そのためにどこに行っても同じ木が見られ,地域的な都市の特徴が現れない。これらは都市の並木としては優れているが,どこも同じにしてしまう。それで,その地域に適当する郷土木を見出さなくてはならない。例えば札幌のハシドイの並木などは注目して良い。

 ・・このような条件のあるもので,都市の並木に適当する木は必ずしも多くはない。アメリカ全土で60種,イギリスでは50種,ドイツでは40種,フランスでは50種,日本では60種,しかし,ある地域のある都市となると更に限られる。パリの並木は20種だが,1000本以上植えられているものは10種,ワシントンでは30種を試験した結果,10種残っている。アメリカでは気候に基づき,13の地域に分けているが,各地域に適当するのは,10から35種である。

 なお世界の主な並木樹種はプラタナス,リンデン(欧州シナノキアメリカニレ,トチ(マロニエ)である。世界の北部地帯に多いのは,シラカバ,ネグンドカエデ,シダレヤナギ,ニレ,ドロ,ポプラなど,中部地帯ではプラタナスニセアカシアトチノキシナノキ,ニレなどが多い。

 日本の並木には次のようなものがある。もっとも優れているもの,プラタナスイチョウ,エンジュ,優れているもの,シダレヤナギ,アオギリ,トゲナシアカシア,トウカエデ,ケヤキ,ナンキンハゼ,トチノキ,イタヤカエデ,ユリノキクスノキなど,なお局地的に使われているものに,ソメイヨシノニセアカシア,ポプラ,シンジュ,ヤマザクラ,ナナカマド,ヤチダモ,センダン,ネグンドカエデ,ギンドロ,サワグルミ,アキニレ,ヤマナラシ,エノキ,シラカンバ,コブシ,ムクノキ,ネムノキ,ハゼノキ,キササゲ,カツラ,オニグルミ,サイカチ,ユーカリなど,

 

並木の植栽

 樹高は4m以上,胸高直径5cm 以上,小さいものは生育の途中,被害を受けやすい。年齢は樹種で違うが,5年から10年。土地があれば,なるべく植樹帯を作って植える。幅が1mから4mの帯状地で表面は芝生を植えたり,砂利を敷いたりする。 なお潅木を添えることもある。それで余地が無ければ,根囲いを作る。大きさは1.5から4平方m。その中は舗装せず,鉄の蓋をつけることがある。植える箇所の土壌は4平方mくらい,深さ1mくらいは良質の土壌を与える。(客土,施肥,土地改良)植栽と同時に支柱をする。木に添え木をする場合もある。これは木が細い場合である。幹を保護するため,金網,割竹を巻きつけることもある。

図  鳥居型(添え木),合掌型,高さ1m以上。

 樹皮に触れる部分は丸太が直接当たらぬように杉皮など巻いて直接触れないようにする。

並木の欠点

 路面が乾かない。このため北部地帯では場合によって南側に植えない必要が起こる。見通しを悪くする。営業の妨害になることもある。郊外では農耕地に影を与え,望ましくない場合がある。日本の並木は狭い道路で電線が並木の景観を壊し,広い道では並木が弱々しく,十分な並木の美観を発揮していない。

路傍植栽 Roadside planting

 これはイギリスで唱えられたものである。(1930)道路に沿えて木を植えるが,並木よりももっと自由な植え方をする。規則正しい揃った並木を作るより,このような植え方をする方がやり易い。ことに田園地域では環境条件が場所によって違うので,この方が自然的であり,変化に富んだ美しい景色が得られる。これはなるべく郷土の木を選び,高木ばかりでなく潅木も植え,環境によって

樹種を選ぶ。空間が広ければ大きな樹種を育てる。単木として植えるばかりでなく,群状に植える時,並木のように植栽線を厳守しないから,適当な空地にどこでも植えてゆく。したがって道路沿って好意的な援助が必要である。群状に植える時,群の大きさは任意だがそれには変化があった方が良い。大きな樹種の群は大きくする。樹木相互の距離はその木の固有の美しさが発揮されるように10から30,40m離れても差し支えない,路線の全体を同じように植えず,要所要所に断続させて植えて良いことがある。

 適当な所にある自然木は保護し,そのままにする。なお,田園の並木を地方並木と言っている。これに対して都市の並木を都市並木,街路並木と言っている。

 

今田先生「森林美学」講義第8 回

今田先生講義録11964 北海道大学農学部林学科

12月9日 

 

Gruenflaeche 緑地

 

 都市計画に当たって,空地,自由空地Fleieflaecheをどのように設けるかは大きな問題である。自由空地の大部分は芝生または樹木で緑装するのが常である。したがって空地は大体において緑地であり,都市を美化し,市民のrecreationに役立つ。都市では人工美が多くなるが,その中に残された自然木,天然林は人工によっては得られないくつろぎが与えられ,これを大切に生かすべきである。日本の現状ではこれを失っている場合が多い。

 

並木Strassenbaum, Alleebaeume

 並木は都市に最も普通に見られる緑地の一種である。並木の与えてくれる緑陰は涼しい木陰のために喜ばれるばかりでなく,並木そのものが美しく,保安上の効果があり,地区の境界線となる。

 美観の点から,次のような点が上げられる。

  • 景色の統一 都市では種々雑多の建物が並び,それも雑然としている。色彩,形からも統一がないのが普通である。ここに並木を植えると,並木によって全体が統一され,雑然とした市街が美しくなる。並木で美しく飾られた場所が並木を取り除いたために見すぼらしくなることがある。なお,田園の畑地などの配列が不規則でただ広々としてまとまりがない場合,道に並木があると同じように統一されて美しくなる。
  • 風景の縁取り これは絵画に額縁をかけると囲まれた画面に集中され美しくなる。景色の場合も同様に並木のフチ付けで美しくなる。
  • 風景に緑を添える。 緑のいない風景は寂しい風景なりやすいが,緑を添えると親しみのある風景となってくる。また,都市の建物はコンクリート,石のような灰色に近い色であるが,それに緑を添えることによって親しみを与える。
  • 質的に変化を与える。 都市の風景はコンクリートとかアスファルトのような硬い材料で作られているが,そこに樹木が現れてくると,その硬さに対して,柔らかい感触が変化を与え,親しみを与える。
  • 道路を強調する。 道路に沿って並木があると道路の形が強調される。幾何学的な道路の曲線,直線が強調される。
  • 路面の水平方向に,垂直のコントラストの美観が現れる。すなわち,路面は水平でも並木はそれに直角である。その端的な景色が美しい。したがって並木を植える場合,路面と同じ平面に植えることが美観上要求される。 

 

並木の植栽の様式 

規則的な植栽 なるべく同じ形,同じ大きさの樹木を一定間隔で植える方法,これは普通に行われていて,植えやすく,よく統一された人工美を発揮し,都市の街路樹に適当する。

不規則な植栽 都市に不規則な植栽は行われなかったが,新都市に行われ好評である。大小不同の樹木を樹種が異なるものも変化に富み,環境と調和すれば美しい。堅苦しさのない良さがある。樹種が違う時は将来のことを考えて植える必要がある。また,路傍の自然木,建物の前庭,建築物なども考えに入れて設計しなくてはならず,規則的に植えるよりも難しい。

 

仕立様式

自然仕立て 自然の樹形を生かし,個有の木の美しさを尊敬するような方法で,木の形も大きくなるヨーロッパにはこのような並木が少なくない。したがって広い街路,公園道路 遊歩道路,住宅街などに適当する,自由な自然の美しさを感じる。防風防火の効果も大きい。

人工仕立て 強度の剪定をして人工的に仕立てる方法,狭い道路や電線の邪魔になるところ,極端には固有の樹形を無視して刈り込みするが,なるべく固有の樹形は生かすべきである。繁華街では人工的な扱いが調和することもある。

 

植栽の位置

車道,歩道の区別があれば,車道の歩道寄りに植えるのが普通だが,建物が」建築線より後退している時は,その建築線に植えるのが普通である。配列は左右対称が普通で,これは並木本来の性格と一致する。互い違いに植栽することは,狭い場所では必然的な美しさを生じるが,なるべく避けた方が良い。下手をすると散漫になりやすい。

樹種が違い,これを2列の植え並べる時は違う樹種の間には別の並べ方があって差し支えない。むしろその方が必然的である。

 

なお,植栽の位置がいろいろ工夫され,特徴あるものができてくる。この例は

 

道路幅が16〜20m以下の場合,1列 20m以上2列40m〜50m以上,4列も可

並木の間隔が小さくなると煩わしい。古いものは狭すぎる。遠過ぎれば散漫になる。道幅などが関係する。

 

 

今田先生「森林美学」講義第7回  

 

今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

12月2日

 

森林美の育成 Waldschoenheltspflege

 森林の風致を考えて取り扱う事を森林美の育成という。また,V. SaerischはこれをForstkunst林芸と呼んでいる。この方法は千差万別であるが,次の4つの方法の統一として考える事が可能である。第一の方法はSchtzung Pflege 保存と愛護,二はZugaendlichmachung 開発,三はVerschoenerung 美化,四はIdializierung der Forstwirdschaft 林業の理想化である。

 一は森林の自然美の保存,愛護を意味する。文化の向上につれて森林本来の自然美は失われていく。そこでこの方法の意義がある。この方法はある区域を限ってそのい中に含まれている自然保存あるいは保護をしようとするものである。時には森林の中の特別な自然物,老大木,滅亡に瀕する種類,歴史物,眺め,流れ,岩,泉,ある種の動物のような森林の自然を保存し,保護しようとするものである。これを法律の力で実施しようとすれば,天然記念物の指定がある。自然公園の中の特別地区,保安林の指定がある。Dimitzは森林の自然を保存,保護することと施業上の醜を避けることをもって,経済林において,実施しうる主要な方法と考えている。おなじような考えをGayer, Mayr, Buelerなども唱えている。

 二は,これは森林を風致的に開発し,その風致を利用するようにすること,例えば,原生林はそのままで,風致的に利用しない場合があるが,適切な道をつける,また,必要であれば宿泊場を設けるなどである。

 三は森林を装飾することで,これは造園的手段を使う。例えば,林内道路に並木を植える。林内の主要地点,例えば休息地点,眺望点,道路の交差点・・・に木を植える。目標となる所に装飾木を植える。林内空間の利用,花壇を設ける。従って,森林を飾ることは森林施業とは関係なく,付加したということになる。また,この方法には二つの流れがある。一つは造園的手段の応用を大切に考えるあり方,例えば,Kraft, Weise, Wappes ・・・他方,このような造園的手段をむしろ避けて,森林に自然を尊重しようとするもの,例えば,Buehlerは森林を飾る造園的手段の価値が」低いものだと言っている。また,Feuchtはドイツの造園家と森林家が施業林をしばしば風景式造園化しているが,それは風致的に見てもあまり面白くない。また,ドイツの近代都市近郊では公園林として取り扱われている森林が沢山あるが,苦労し,多大の労力をかけてしばしば満足できない場合がある。それはあまりに造園的である場所において適当であっても,森林であるか,公園であるか不明であるためであろう。

 四は施業林において最も大切な手段となる森林施業のすべての利用を・・・完全に適合させると同時に,風致的にも満足させるよう考えることである。このことはある利用の目的にある建築物をその目的に完全に適合させながら,非常に美しい・・こういったものである。森林美学はこのため多大の努力を払ってきた。森林の施業は利用と維持を目的としているもので,美意識を持っていないのが普通である。それ故,林業と合目的々でありながら,風致的には関心がないことはまれではない。著しいのは皆伐作業で昨日までの美林も裸にされ,伐採跡地が残される。伐採跡地は損なわれた自然の乱雑な印象を与える。一列に造林しても回復するには数年を要する,切ったままでは数十年も要する。また,回復するまでは幾何学的な伐採跡地の形は不調和である。それ故風致的には択伐が要求されている。林業の手段は本来の目的を達するため一つの限られているものではない。人工造林より天然更新を採用した方が風致的にも目的にも適うことがある。そして森林経理の場合も区画線は平地では直線でも差し支えないが,山地では地形に適わせた区画線が合理的であり,かつ美しい。また,林縁は枝打ちしないのが林業上の要求であり,林縁に潅木など自然に発生させ,林外から林内が見えないようにするのが美しく,造林の目的にも一致する。

〜〜〜〜〜〜

国有林の風景施設(2)開発

 国有林では最近,風致的利用に注意を払い,次のような施設を作る。

1. 林内外の歩道,これは巡視のための歩道,林道などを登山道路などに沿わせている。このような場合,道路沿い左右,30〜40mそれ以上を風致林帯として保護することがある。また,旧道を保存したり,特に道をつけることを避け,登山家のために保存していることがある。なお,風致利用者のため森林軌道の便乗を許したりする場合がある。風景地の橋を特に風致に合うよう設計したりする場合もある。

2. 路傍設備,指導標,里程標,方位標,植物名札,名所名札,腰掛け,野外卓,水飲み場,チリ箱の類,また,スキーヤーのための指導標など。

3. 野営指定地が設けられた時,指定以外のキャンプは許されない場合が多い。大抵の場合山小屋,温泉,旅館に近く大きなものは3−5ha,そして1haくらいのものもある。小さなものは0.1haくらいのものがある。大中の野営場には掲示板,水飲み場,ゴミ捨て場,キャンプファイアーの場所,卓付き腰掛け,などの設備がある。

4. 宿泊舎,造林小屋,狩屋,巡視詰所などで宿泊の便を図っていることがしばしばある。特にそのために設計したものもある。

5. 休憩所 展望台,東屋,巡視用展望台を風致の利用に提供している。但し,訪林者の多い景勝地では休憩所,東屋などは民間に貸地をして建てさせていることがある。

 木柵,鳥の巣箱,鑑賞樹,日本庭園などのある柵は海岸林,保護区など・・・公衆の出入りできる区域の境に設ける。自然の風景合えば,美しいものがある。・・鳥の巣箱もしばしば設けられている。鑑賞樹の植栽もあるが,自然風景

地では郷土樹種が望ましい。また,見本園を林内の一画に設けることがあるが,自然木に名札をつけた方が望ましい。

6. 電信用の鉄塔の敷地を利用者のために開放している場合がある。・・・

7. 禁猟区 国有林には多い。猟区を期間を限って利用させている場合もある。林内放牧がその風景に特徴を与えている場合がある。

8. 林内貸地 国有林内の営業用施設は大部分,貸地として民間で営利的に経営しているが,中には地方の公共団体による奉仕的な営業の場合も見られる。但し,貸与面積は最小範囲に限られている。

今田先生「森林美学」講義第6回

今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

11月25日

 

樹木の集団・配植

 樹木は以上のように単木として美しさを」もっているが,また集団の集まった全体としての美しさを持っている。自然風景を観照する時は集団から美しさを取り出す必要あり,造園では配植の美を作り出さねばnらない。多くの樹木が¥雑然んと集まっただけでは,自然風景は別として人工的要素が加われば美しくなくなる。例えば,樹木の見本園に見られるように,知識欲は満たされても美しくない。特に分類的に並べると配植美は作れない。植木屋の溜植や苗畑の樹木苗の捨て植えに美しいものがないのは配植の美が無いからである。ある樹木の集団が美しいためには,木と木が近づけば,近づくほどそれぞれが独立したものであってはならない。互いに関係付けられ,全体としての統一が必要である。例えば樹種については,全部同じなら単純な美があり,種類が多ければ複雑な美しさを見せるが,多過ぎれば統一が無い。木の形については高さの関係がある。大きい木を主にして小さな木を添えるやり方,また,違った樹形の」組み合わせにも美しさがありうる。また,木々の間隔が美観に関係し,規則的であれば人工的になり,不規則にすれば自然的になり,」密生したり,分散したりするところに美がある。集団が描く林縁の線にも美がある。

 

公園施業と森林施業Park- und Forestwirtscaft

 森林を風致的に取り扱う場合,二つの極端が考えられる。その一つが公園施業であり,もう一つが森林施業である。森林の理想的風致的取り扱いを公園施業とすると,その理想から最も離れているのが森林施業であり,その中間に若干の段階が存在する。例えばGustaf Kraftは「森林はParkとして最も風致的に取り扱うことができる。但し森林利用の目的に供している普通の施業林でもその施業上の目的と根本的に反しない範囲で風致的に取り扱う可能性が多分にある。但し普通の施業林では高度の風致美は求め難い。そしてその間に風致を主として森林の利用を従とするあ森林施業が存在するはずである。」 Hans Hausrathも同様にParkとWirdshaftwaldの中間にWaldpark(森林公園),Parkwald(公園林)を考えている。彼に従うとParkでは森林または樹木はその風致の大切な要素になっているがそれは大面積の密林として表れておらず,大小の群団として取り扱われ,少なからざる数の樹木が個々の樹木として風致的に取り扱われている。なおParkでは森林や樹木の他に芝生,流れ,池などもそれぞれ大切な要素である。それらが集まって全体として森林を風致的にしている。そして全てが風致を目的として取り扱われている。従ってParkでは木材の利用は全く考えられていない。Waldparkは林地がその区域の大部分を占め,森林を主とする公園である。但し森林の取り扱いは風致を目的とする純然たる公園施業である。従って木材を収穫するため取り扱われていない。Parkwaldは木材の生産とともに風致を考えて取り扱う森林である。

 施業林は木材生産が主たる目的であり,その風致を考えなくてはならない場合には,森林の風致の毀損を最小限に留め,経済林業を営むべきかが問題といえる。なお田村剛博士は施業林を風致的あるいは保健的利用に幾分適するように多少造園的に取り扱ったものが,公園林,さらに一層造園的に取り扱えば,」森林公園,なお一層造園的に技巧を加えると,公園,なお一層造園的に取り扱えば風景園Landshaftgartenになると言っている。なお,田村剛は公園林を,遊苑林,森林公園を森林遊苑,公園を林苑とも使っている。また,V.Saelischは最高純収穫の根本的目的と本質的に反しない限りにおいて,やや強度の風致的に取り扱われた施業林を修装林Vershaenerter Forestと述べている。それからWirbrandという人は国民の保健のため風致を考えて取り扱った施業林を休養林Lustwald,享楽林という名で呼んでいる。

 

森林美の育成 Waldschoenheltspflege

 森林の風致を考えて取り扱う事を森林美の育成という。また,V. SaerischはこれをForstkunst林芸と呼んでいる。この方法は千差万別であるが,次の4つの方法の統一として考える事が可能である。第一の方法はSchtzung Pflege 保存と愛護,二はZugaendlichmachung 開発,三はVerschoenerung 美化,四はIdializierung der Forstwirdschaft 林業の理想化である。

 一は森林の自然美の保存,愛護を意味する。文化の向上につれて森林本来の自然美は失われていく。そこでこの方法の意義がある。この方法はある区域を限ってそのい中に含まれている自然保存あるいは保護をしようとするものである。時には森林の中の特別な自然物,老大木,滅亡に瀕する種類,歴史物,眺め,流れ,岩,泉,ある種の動物のような森林の自然を保存し,保護しようとするものである。これを法律の力で実施しようとすれば,天然記念物の指定がある。自然公園の中の特別地区,保安林の指定がある。Dimitzは森林の自然を保存,保護することと施業上の醜を避けることをもって,経済林において,実施しうる主要な方法と考えている。おなじような考えをGayer, Mayr, Buelerなども唱えている。

 二は,これは森林を風致的に開発し,その風致を利用するようにすること,例えば,原生林はそのままで,風致的に利用しない場合があるが,適切な道をつける,また,必要であれば宿泊場を設けるなどである。

 三は森林を装飾することで,これは造園的手段を使う。例えば,林内道路に並木を植える。林内の主要地点,例えば休息地点,眺望点,道路の交差点・・・に木を植える。目標となる所に装飾木を植える。林内空間の利用,花壇を設ける。従って,森林を飾ることは森林施業とは関係なく,付加したということになる。また,この方法には二つの流れがある。一つは造園的手段の応用を大切に考えるあり方,例えば,Kraft, Weise, Wappes ・・・他方,このような造園的手段をむしろ避けて,森林に自然を尊重しようとするもの,例えば,Buehlerは森林を飾る造園的手段の価値が」低いものだと言っている。また,Feuchtはドイツの造園家と森林家が施業林をしばしば風景式造園化しているが,それは風致的に見てもあまり面白くない。また,ドイツの近代都市近郊では公園林として取り扱われている森林が沢山あるが,苦労し,多大の労力をかけてしばしば満足できない場合がある。それはあまりに造園的である場所において適当であっても,森林であるか,公園であるか不明であるためであろう。

 四は施業林において最も大切な手段となる森林施業のすべての利用を・・・完全に適合させると同時に,風致的にも満足させるよう考えることである。このことはある利用の目的にある建築物をその目的に完全に適合させながら,非常に美しい・・こういったものである。森林美学はこのため多大の努力を払ってきた。森林の施業は利用と維持を目的としているもので,美意識を持っていないのが普通である。それ故,林業と合目的々でありながら,風致的には関心がないことはまれではない。著しいのは皆伐作業で昨日までの美林も裸にされ,伐採跡地が残される。伐採跡地は損なわれた自然の乱雑な印象を与える。一列に造林しても回復するには数年を要する,切ったままでは数十年も要する。また,回復するまでは幾何学的な伐採跡地の形は不調和である。それ故風致的には択伐が要求されている。林業の手段は本来の目的を達するため一つの限られているものではない。人工造林より天然更新を採用した方が風致的にも目的にも適うことがある。そして森林経理の場合も区画線は平地では直線でも差し支えないが,山地では地形に適わせた区画線が合理的であり,かつ美しい。また,林縁は枝打ちしないのが林業上の要求であり,林縁に潅木など自然に発生させ,林外から林内が見えないようにするのが美しく,造林の目的にも一致する。

〜〜〜〜〜〜

国有林の風景施設(2)開発

 国有林では最近,風致的利用に注意を払い,次のような施設を作る。

1. 林内外の歩道,これは巡視のための歩道,林道などを登山道路などに沿わせている。このような場合,道路沿い左右,30〜40mそれ以上を風致林帯として保護することがある。また,旧道を保存したり,特に道をつけることを避け,登山家のために保存していることがある。なお,風致利用者のため森林軌道の便乗を許したりする場合がある。風景地の橋を特に風致に合うよう設計したりする場合もある。

2. 路傍設備,指導標,里程標,方位標,植物名札,名所名札,腰掛け,野外卓,水飲み場,チリ箱の類,また,スキーヤーのための指導標など。

3. 野営指定地が

4. 宿泊小屋

5. 休憩所  木柵

6. 電信用

7. 禁猟区

8. 林内貸地

今田先生「森林美学」講義第5回

今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

11月11日

 

Der Aesthetische Wert der Horzarten樹木の美的価値(続き)

 

芽と葉 例えば新緑期には芽から葉が展開していく有様が美観をそそる。これは樹種によって特有の動きをする,その動きが美しい。

 マツ,イタヤカエデ,ポプラ,プラタナス,ヤナギ

そして,葉の形については植物学上の名称があるが,風致的には葉の大きさ,厚さ,裏表の色,葉柄の状態,葉の集まり方が問題である。カバやヤマナラシのように葉柄が長く,また葉が薄いものは微風にも揺れて,軽快であり,また,明るい感じがする。これに反してハリギリ,ホウノキ,カシワなどのように大きいものは重々しい感じがする。カシ,クスのように厚く硬いもpのは暗い感じになる。またナナカマドのように複葉は軽快であるが,キハダ,ヤチダモなどの複葉はこれより重い。葉柄が太く,短いと葉が枝に密着するようになり,風にそよがず,沈鬱になる。針葉樹は枝に密着しているから,暗い色も加わって厳粛な感じになる。一つ一つの葉の形も樹種がそれぞれ違い,様々な美観を持っている。

色の美しさ 三好学「植物生態美観」に次のようなことが載っている。「植物の中でもギンリョウソウの如きは真白であり,根無しカズラなどはほとんど白色である。また,ナンバンギセル,ヤマウツボなどのその他の寄生植物では無色あるいは緑色以外の色があり,また,下等植物中菌・,地衣,海藻などは極めて鮮美なる紅色,褐色,橄欖色などを表しているものが多い。しかし,通常の植物は緑色で,コケのような小さいものも数百尺に達する大木でも,固有の緑色を失わない。この緑色には濃淡の差があり,季節,気象などでも変化が現れてくるから,単調ではない。とにかく,草木の緑色は平生,見慣れて・・・もしも植物の基本色が緑色ではなく,仮に黄色,または赤色あるいは黒色であったなら,われわれの審美眼は根本的に変わるだろう。すべて葉の質が薄くて柔らかな植物,また一般落葉樹はおおむね葉の色が淡色で鮮明であるが,これに反して,葉肉の厚いもの,毛やその他の付属物のもの,概してトキワ属に属する色・・・様々に変わっている。マツ,スギ,モミジその他の松柏科では葉の色が黒ずんで見える。これは葉の組織がいたって厚いもので光線が十分に内部に入りきらないからである。これらは植物の葉緑素固有の色に多少関係している。グミノキなどは葉の表面に白い鱗片が付いているので葉が白く見え,・・・ハハコグサ,ウスユキソウなどでは葉や花の部分に細い柔らかい毛があって,その毛が空気を含んで,光線を反射するから白く見える。緑色の他に種々他の色が混じって黄色,赤色に見えることがある。また,葉に白い斑が入ったり,黄,赤,紫などの斑が入っていることがある。」

 紅葉は樹種と気候の関係があって,どこでも見られるとは限らない。ヨーロッパ中央部では紅葉が少なく,北アメリカ,日本ではこの点では恵まれている。紅葉植物の中でもモミジ類,ナナカマド,ツタウルシ,ニシキギ,ハゼなどの紅葉はとくに美しい。イチョウシナノキ,トチ,ハリギリ,イタヤ,ホウノキ,ナラなどは黄または橙色になる。カエデ類,カツラなどに見る春先の紅葉も新緑に映えて美しい.コブシ,サクラ,ホウノキなどは花の美しい高木だが,花の美しい潅木は沢山ある。花の色が葉の緑とはっきり区別できる場合,目立つことが多い。葉の色と同じ緑の花が咲くこともある。(カエデ)幹や枝の色と似ているものもある。(ニレ)このような密やかな花は樹木の特徴で,これに気づくと興味と美観を誘う。遠くから見てはっきり見える花の色は白,次に黄,赤の順になる。赤も薄くなると明るく目立ってくる。大きな花は目立つが,小さい花でも沢山でさえあれば,目立ってくる。

香り 植物の香りは主に花であるが,他の部分,根,茎。あるいは皮,木質に匂いがあり,また,葉,果実,また,生育している時に香るもの,また,枯れてから香るものがある。香りの性質と強さは様々で,快く感じるもの,悪臭を感じるものもある。また,遠くから分かるほど香りの高いもの,仄かなものもある。また植物体に手を触れなければ香らないものもある。木材に香りがあるものはビャクダンや沈香のような熱帯産のものがあるが,日本ではクス,針葉樹でエゾ,トドにも香りがある。葉が匂うものも多い。(カツラ)多くは揉んだり,葉に近づいて嗅がないとわからない。香りの高い花木はホウノキ,モクセイ,ウメ,サクラまど,しかし,草本類には多い。我が国で特に花の香りの高いものはモクセイであろう。10月中旬に花が咲くと一町くらい香りが伝わる。ホウノキニセアカシアなども花が咲くと周囲は芳香を含む。ウメも香りの高い方で風が吹くと良い香りが送られる。サクラの花は良い匂いをしているがあまり発散しない。ヤマザクラサトザクラにおは割に香りの高いものがある。我々が殆ど分からない弱い香りでしかもその形や色が著しくないものでも,昆虫が探して集まるところを見ると,昆虫の嗅覚は人間と違うことがわかる。嗅覚は目,耳のような高等感覚ではないが,美感の補助になるものである。

環境 樹木はそれぞれ美しさを持っているが,環境から切り離して美しいものはない。奥地林にあるものは深山の景色以外ではその特徴は味あわれない。イチイは多くの場合,下木として成長する。下木として育ったものを庭木としても多くは不調和である。ヤナギは水とともに眺めなくては趣が少ない。ヤチハンノキは湿地で特徴を発揮する。原野,丘陵,高原,山岳,火山灰地,河川など様々な土地にある樹木はそれぞれ環境に適応し,季節・・・・自然の美しさを示している。だから,それをそのまま庭園や公園に移植しても自然の美しさは味わえない。

 目で識別できる最も小さな植物はコケである。これは蘚類,苔類,地衣類であるが,石に上に生え,または木の皮に生えている。北方では緑色の蘚類,苔類が」厚くきぎを覆って,素晴らしい美観を示す。また,それ自身は目立たないが,樹木や地面,岩石などに付いているとそれによってその表面が自然化され美化される。(野化)地衣類には緑色のものが少なく,灰色,黄色,褐色などで深山の木から垂れ下がっているサルオガセな独特の美観を表す。草の類は草原として植物群落を形作り,美観を呈するが,これに樹木を加えると」いよいよ美しくなる。森林に囲まれた草原,原野の所々にある群団を成す美しさ,水辺のヤナギの散生,湿原に点々とヤマハンノキの散生など趣が深い。潅木類は大抵,地面から多数の枝が出て,それが枝分かれし,高木のように一本の幹から枝が出ているものが少なく,高木とは大きさで違うばかりでなく,樹形も違う。自然状態では高木と潅木,草本類と組み合わされて美しい関係を作ることが多い。・・・類の発達する熱帯,・・・それほど発達していない日本でもマンケ類?が美しい。これらが大木に巻きついている有様は自然的で美しい。