今田先生「森林美学」講義第10回

 今田先生講義録1964 北海道大学農学部林学科

1月20日

 

Gruenfflaeche 緑地(続き3)

 

前庭

  建物と 道路の間の緑地,これによって美化される。また,騒音を避け,風通し,採光もよくなるなど,美観,衛生,保安にも役立つ。このため,前庭線,後退建築線を都市計画上設けることがある。これは住宅地ばかりでなく,工場地にも望ましい。この前庭線の幅は例えば,道路幅50フィートで20から30フィート,道路60フィートでは30フィートのものを設けている例がある。普通の建物にも少なくとも3から10mの前庭が欲しい。学校,病院,ホテル,図書館などの公共施設には前庭が是非欲しい。前庭は柵の類は設けず,開放する事が望ましい。また,街路の並木と調和させ,建物の前面に蔦などを絡ませる前庭が欲しい。明るいローンが前庭の芝生地となり,そこに樹木を添える。

 

街園,広場

 街路の上に設けられる装飾的なものだが,実用にもなる。街園は道路の空地を利用した小さな場所を指す。これを設ける場所は街の一角などであまり広くない都市の緑地として美観を添える場合が多い。日本の都市が一般にあまり美しくないのは,広場がないためである。広場にはいろいろの目的がある。装飾を主としている場合は,装飾広場Schmukplatz,交通の便利のために設けられたものは交通広場,その他,ある建築物を主とし(教会など),記念物を中心にして設ける場合がある。あるいは集会のため・・・。レクリエーションのためなどの広場,また,市のための広場,災害のための避難所にもなる。広場はいつも集まりやすいことが要求される。その広さは周りの建物の高さから,2,3倍とされる。交通の著しい妨げとなってはならない。

 小さい広場はその中に入れないことともあるが,大きいものでは出入りができるようにするのが普通である。出入りできなくても,外から中を眺められるようにする。広場の形は整形の場合が多い。地面に凹凸がある場合は不整形にすることがある。整形の方が街路や建物に」調和するが,硬い形になるので,その中の植栽を自然風にして和らげることもある。多くの場合,陰を与える並木,装飾樹を植えるのが常である。

 

道路公園 Parkway

 これは道路を主とした細長い公園が道路を通りながら美しい風致を楽しむ。道路はドライブ,徒歩,自転車用に特に作られ,それらが並置される場合がある。目的はrecreation  また,これで公園などを連絡することがある。これを設ける場所は,景色が良くて土地の値打ちの無い所,湿地,河岸,傾斜地,崖地,海岸地など好んで設ける。そのような所は道路を中心に設ける・・樹林・・したがって,また道路公園の配置や形は不規則になるのが常である。Recreationが目的で近道が目的で無いから,風致の優れた場所を通るようにする。この幅は一定してないが,狭い場所でも30mくらいは必要である。広い場所では300m〜400mもある。

 

公園道路 並木大路 Boulevard

 これはフランスで発達し,並木や芝生などで飾られた立派な道路をいう。芝生,花壇,噴水,彫像などもある。形は様々である。この起源は19C後半で中世の城壁を取り除いた跡地を遊歩道Promnadeとしたのに始まる。18世紀後半になると市民が自然に触れることを好むようになり,盛んに散歩したので,遊歩道がますます作られるようになった。フランスの都市は広い並木と  ブールバールがあるのが普通である。パリの街づくりはナポレオン3世の時に行われたもので,公園,ブールバールなど後世に残る美しい都市となった。一般にブールバールは整形的式の並木や芝生を配置した幅の広い立派な道路を指す。これに反し,道路公園は樹木などが不規則な状態で公園を作っている。この幅は50m以上のものが多い。例えばパリのシャンゼリゼは85mの道路である。ベルリンのウンテルデンは60m,マドリードのパセロは85m,ウィーンのRingstrassetrasseは57mである。

 

近隣公園 District park

 近所の市民のrecreationとしての公園,この他,休息,観賞を主とした静的recreationを目的とする。これが普通に見られる公園で,誘致半径800mくらいが標準で遠くても1600m,広さは様々だが,理想としては5ha以上が望ましい。小さなものは1ha前後のものがある。施設は地域の要求に適応させる。居住地域,商業,工業地域に適応させることが必要である。運動施設は子供の遊劇場は設けるが,大人のものは設け無いのが普通である。広い場合は運動施設も設けるが静的recreationを妨げ無いように,はっきり隔離して設けなくてはならない。施設は真ん中に広場があり,その周りにその他の施設を配置しているのが普通である。このような配置を地割と呼んでいる。標準となる地割は3区地割である。⑴林苑区,これは園地の大部分を占め,ここに樹木を植え,池のような水面区を設ける。⑵中間区,普通言う公園の施設,休憩舎,・・・小植物園,⑶児童遊技場,小学生以下の子供を対象としたもの。

 

総合公園Volkspark large park

 市民全体を対象にした大きな公園,ここでは休息,観賞の静的レクリエーションと共に運動などの動的レクリエーションのための施設を設ける。そして運動施設も風致的に扱われる。・・・この景観も自然風に扱われる。ただし手の入った自然であり,自然らしく作られたものである。面積は大きくなるが,交通の路線,鉄道や主要な街路がこの区域内を貫通しないことが必要である。このような路線を避け,このような路線の間に介在させるか,それに面した所に設ける。誘致半径は1600〜4800m,車で30分程度の所を選ぶ。また,人口4万人に対して,40〜100haのものを一箇所設けるのが普通である。混雑しない自然が楽しめるようにする。地割は大体近隣公園に準じ,草地ローンの広場が大切である。自動車は中を通さず,必要があれば境界線に近い方を通るようにする。車の出入りする建物もなるべく縁に設ける。この代表的なものはパリのBois de Boulogne 846ha ロンドンのハイドパーク142ha ベルリンのGungfern hide 160ha.