アルプス公園花の丘のササユリ

はじめに
 アルプス公園の花の丘は、アルプス公園の拡張計画に際して、自然環境の保護と開発の論議の中で、開発区域として人工的に作られた野草園の丘であった。しかし、野草の植栽は芝生の中に花壇を造って植えられており、公園管理では手入れが出来ないために、植栽地にはヒメジョオンなどの雑草がはびこり、野草も衰退してしまった。芝生も刈払いが滞って、アカマツの幼樹が侵入する有様である。やがて、アカマツ林になるのかと考えていた。森林を切り開いて造った丘に森林が回復することは、随分、無駄なことを行ったといえる。

ササユリの生存
 最近行ってみると、繁った草地の中にササユリの花が咲いている。花壇の生き残りであるのだろう。
花壇の雑草地がススキ草原に移行し、そのススキ草原が、アカマツに遷移しようとしている。ササユリはススキ草原を構成する野草だったのであろうか?ヤマユリを山の中で見かけたことがある。確か尾根部の若いアカマツ林の中でススキの間にあり、一瞬で山の豊かさを感じたことを覚えている。
 ササユリにしても、ヤマユリにしても、山の中で見かけるとあまりにも美しく、薫り高い。こうした野草が満ち溢れていた草原では、お盆の花などに利用したということである。しかし、草原が減少し、まれに見かけるようになると、野草が衰退すると同時に、野草を庭に持ち帰るための採取も行われたのであろう。ササユリ、ヤマユリ山野草趣味の人の庭で咲き誇っていることがある。
 花の丘のササユリも花壇に植えられていたが、雑草地からススキ草原への遷移で、本来の生育地に還る事ができたのであろう。しかし、ススキ草原はアカマツに遷移している。しばらくは、ササユリはススキなどと競争して生き延びるであろうが、衰退するのが運命であり、アカマツ林に自生するササユリ、ヤマユリはススキ草原の残存でしかないのだろう。

アカマツ林の林床管理
 里山の森林育成で、薪炭林やアカマツ林の維持のためのボランティア活動が行われる場合がある。放置された森林の樹木が成長し、高木層も林床も高密となって、林内は入ることもできない藪となってしまう。この時期に林床を全て刈払うと、一見、高木が整然として美しく見える。だが、翌年には雑草によって悩まされるだろう。雑草の中に美しい野草も見出されるかもしれない。しかし、そのままでは、野草はまた衰退するだろう。
 そこで、容易にできるボランティア活動の林床の刈払いから、出てきた野草の育成に移行するのは当然といえるのかもしれない。ササユリも育成される野草の一種になりえるだろう。しかし、アカマツ林の林床に草原を持続させることは、日陰や侵入する木本植物との競争によって困難となとなるだろう。
手入れとすれば、高木層を育成するために間伐を行い、林床をそのままにして競争させ、遷移の進行を待つだけでよかったのであろう。