森林の林冠と林床

はじめに
 森林は高木の集団によって構成され、草原は高木類の庇護を受けず、ササ類など以外、草本類は地上部で越冬することができず、種子か地下部で生存する。乾燥地帯では乾燥時期を草本類は地下で耐えており、乾燥に耐える高木類が少ないために、草本が優先する。人為的影響や自然破壊で裸地となった場所は、草原となり、草原から森林へと遷移していく。草原から森林へと変わる途中には、森林内に草原の残存植物が生育し、林冠の庇護によって、潅木類や高木の稚樹が生育を始める。しかし、やがて、日陰に耐えない植物が衰退し、日陰に強い植物が生育する。上層の樹木の成長と下層の樹木の生育とともに林冠は閉鎖、複層化し、林床はますます暗くなってくる。林床の植物が衰退し、コケや腐食などの林床へと推移する。その、林床は次代森林を更新する高木の稚樹の生育に好適な環境を提供する。落葉や枯枝、枯死した倒木は微生物や昆虫によって分解され、土壌の養分を豊かにし、森林の生育を助ける。
 森林構造にとって、林冠と林床の関係は、林冠が下層の植物を庇護し、林床は森林を育てる働きをしている。林冠のによって林内の環境を判断し、下層と林床の状態によって森林生育の動向を判断することができるはずであり、林床は林冠の状態によって敏感に変化する。しかし、林床を草原から日照の遮蔽による変化として段階づけることができるとすれば、草原→草原残存植物→日陰植物→コケ→腐食あるいは裸地の5段階に区別できる。また、そこに、更新樹の種類と生育状態を加えることができる。例えば、アカマツからサクラ、カエデ類、次にコナラ類、次にヒノキやサワラ類あるいはコシアブラホウノキさらにモミやケヤキなどである。しかし、林冠の閉鎖状態によって更新樹の生育は微妙である。

林冠の状態
 一斉人工林の林冠が一様であるのに対して、天然林の林冠は凹凸があり、変化に富んだ林内環境を提供する。林冠の凹凸は林内の明暗と対応し、下層の林木の生育に影響して、林冠とは逆の凸凹の構成となるはずである。下層の凸部分が上層の林冠となってきたところから森林更新が始まっている。