剪定ハサミの森林保育

はじめに
 山に行くのに剪定ハサミを持っていく。ナタや鎌で藪を切り開くには、ナタは藪を払うには小範囲で、切れなくなった鎌は藪を払えなくなる。より以上に藪を構成する樹木をやたらに切って、残しておきたい木まで切ってしまう。全ての藪を切り開く下刈をしたいわけではない。道筋の林縁にできた藪を開いて歩き易くするために切り開くのだ。藪にも株と株の隙間がある。それを利用して、除去する株だけを最小限に切ればよい。そして、残したい木の株を残していくのだ。また、残した木に被さった高木の枝の先を切っていけば、残したい下層木が育成されてくる。こうした作業には剪定ハサミが役に立つ。
 草刈りにはほとんど動力草刈り機が使われる。草原だけでなく、林間の薮も一網打尽に刈り払うことができる。仕事の効率は良いが、選択的な除伐や残したい草木の残存は草刈り機では困難である。こうした皆伐の結果、再生した草原は牧草や雑草に変わり、薮もこうした雑草が増加し、再生した灌木は株立ちの無惨な姿となり、更新木も残らない。
 選択的な草刈り、薮払いはに林縁や下層植生の自然育成のために必要であり、残された草地や下層植生によって草地や薮の繁茂を抑制するので、一度の作業が後の植生管理に役立つものとなる。残存する下層植生の選択によって、幼齢木の条件を良くし、芽生えを促進して将来の森林更新も誘導することができる。林床管理の作業に草刈り機の破壊的影響を注意して制限することが大切である。森林の細部の育成には、手刈り鎌や選定ハサミで手入れして、作業の見通しを見いだすことが必要と考える。
 太い枝や幹には選定ハサミを鋸や鉈に換える必要が生じる。さらに、チェーンソーが必要となる。しかし、先にチェーンソーを導入すれば、細い幹を払うのは非効率なので、先に草刈り機が導入したくなる。

剪定ハサミの効果
 剪定ハサミは庭園木の管理に使われ、規模の大きな森林に持ち込むのは適さない考えられるだろう。しかし、森林も小空間の集積であり、庭園よりもさらに細部の世界を見いだすことができる。森林が微小な空間から巨大な空間までの有機的な組織で構成されていることが体験される。顕微鏡から双眼鏡まで視界を補えば、その森林空間の広がりがわかるだろう。様々な生物がその空間を生み出すとともにそこで生活している。
 剪定ハサミは1本づつの幹や枝を選んで切るのに適している。邪魔な木、突き出た枝を切るだけで視界が開け、残る木が浮き出てくる。森林の手入れの効果には、浮き立たせる感覚が大切である。錯綜した枝や藪に隠されて、見えなかったものが、少しづつ邪魔するものを覗いて見えてくる。視界を開くことと見えなかった森林の姿を浮き立たせることを同時に達成する切り開きを注意深く行うために剪定ハサミの効果がある。
 絡みついたツルも幹を見つけて引き剥がすとたちまち取り除くことができる。枝分かれしながら伸びて成長したツル植物をその成長の基点の幹を引きずり、取り除くことになる。絡み合って錯綜した樹木も枝野根元、幹の根元から切り取れば同様である。しかし、切り取ることが問題ではなく、残すことが問題である。藪は植物の競争関係によって錯綜しているだけなのだ。その錯綜は自然の競争によって勝敗が生じてくr。自然に代わって残す植物を選定して、藪の錯綜を改めるために切り取る作業が役立つ。


剪定ハサミの限界
 鋸かナタで切り取りと枝打ち 中高木の伐採はチェーンソウによって