森林風致 林内の雰囲気と印象

 林内は林外と林縁によって区別されているといえる。同時に林冠によって天空が覆われている。林冠の閉鎖の疎密は林内への透過光の量−明暗と関係し、下枝高、下層の樹木の疎密に影響する。密度が高く、林内が暗くなることで、下枝高が高くなり、低木層も抑制され、一方、密度の高さは林木の幹の多さとなって、見通しを良くする面と悪くする面が相殺する。疎な森林では林内が明るく、下枝高は低く、下層の樹木が繁茂することで、見通しは悪くなる。見通しの悪さは、林内の閉鎖を強める。上空の林木の樹冠は林木間の間隔と一致し、樹高と幹の大きさ、幹の大きさと樹冠が互いに比例関係であり、比例関係を保ちながら森林が成長するとすれば、森林のスケールが森林の成長とともに拡大する。見通しの程度を距離として考えれば、森林の疎密、明暗、スケールが見通し距離に関係する。林内は透過した見通しのある閉鎖空間であり、関係する要因が絶妙に関係して透過空間を作り出している。林縁に近づくと、林外からの光で明るく、下層が繁茂し、林木の下枝が低くまで残っていて林外の陽光を遮る壁を作る。その壁は逆光によるシルエットを構成する。この壁が林内への入口となる。林内は樹冠のドームで覆われ、林外の光線や風雨を遮り、緑陰と微風の環境を作り出す。林内を構成する林木の幹や枝、下層の樹木、林床、生息する鳥獣や虫などの動物などの事物からも影響される環境である。
 林内が林外に比べて、快適であるかどうかは相対的な問題である。日差しのきつい場合はそれを避けて緑陰を快適とするが、肌寒い日の陽光は林外を快適にする。風も同様である。様々な事物の影響も場合によって快・不快が変わってくる。絶対的に林内に快適さがあるのではなく、林外、林内が補完して、ひとの快適さの選択があるといえるだろう。明るい芝生と森林が連続して存在すれば、快適さを選択することができる。快適さの選択によって、林内、林外の空間は、雰囲気を感じる空間となる。林外は天候の影響を直接受けて、雰囲気が醸成される。林外の天候は、林内では天空、側方の透過する壁によって遮断、緩和されて影響するので、森林の状態によって天候の影響は異なり、森林の状態によって異なる雰囲気が醸成される。林内の様々な場所を移動して、森林の状態が異なってくれば、それぞれの場所で特有の雰囲気を感じることになる。
 林内の雰囲気は、場所ごとの見通しの広がる範囲の空間に成立していると感じられるが、その空間を構成しているのは、林木であり、林木の状態によって影響を受けている事物である。空間を構成する事物を個々に知覚しながら、それらの事物の総和によって生まれる空間を雰囲気として感じることになる。それぞれの事物への注意、注目はその特徴が印象づけられることになる。事物の印象の総和が、雰囲気を作り出すものでもある。林内は空間を雰囲気として感じながら、構成する事物への印象を持ち、雰囲気を構成する要因としての印象と印象が雰囲気を生み出していく感覚が共存する環境といえる。