森林と景観

はじめに
 個々の地域の景観の骨格は、地表の条件となる地形によって形成され、自然と人工、森林と土地利用の関係が判然と表示されている。地形の平坦さ、水利条件によって人の生活区域が限定され、人工景観要素の施設と農業のための土地利用に対して、人が利用しない土地、自然のまま放置された場所は、その逆に、山地の傾斜地、水利の便の無さ、災害の危険によって成立している。自然のままの放置が植生を持続させ、遷移によって森林を成立させることによって、自然の人工的改変に対置させる要素となる。
 森林が山林であることが多いことがうなづける。平地の森林、山地の生活区域は限られた場所にのみ成立していることもうなづける。景観の骨格となる地形は山地と平地に分けられ、山地は面的に森林で覆われ、平地では疎らに森林が存在する。流域の面から山地は谷と尾根に、平地は台地と低地に分けられ、それぞれの地形で、森林の様相が異なる。

山地と森林
 山地の地形を骨格として成立した山林景観の遠望ははるかに広がっている。山地の内部に入ると、谷の地形と尾根の地形、中間の山腹がある。等高線は凹凸で蛇行し、凹部は谷、凸部は尾根となり、その中間が山腹である。森林内では地形は林床の傾斜や水の流れや土壌の湿度としてその変化を感じるだけで、林内であることに変わりが無い。しかし、道路や広場などの切り開かれた場所からの森林の景観に与える影響は大きい。視覚的に地面を林冠分の高さに高めるからであり、地面から林冠までの高さを林縁あるいは森林の断面で示すからである。
 道路によって開かれた山林の視界は地形と森林の関係を明確に示している。道路の幅員と視界の広がりは比例しているが、山腹の傾斜と幅員の大きさとの相乗関係で、切土、盛土法面の規模を大きくする。視覚的には切土法面が大きく影響する。