森林の個性

はじめに
 森林を林相という言葉で特徴を示すのは思い切った方法だと感心した。子供の頃の森林は木の生えている場所であり、一本一本の木が特徴的だった。いや、特徴的な木を見つけるだけで、森はただ未だ知らない木のある広がりであって、森を見ることは無かったかも知れない。また、木さえも登って遊べなければ、無関心であり、ドングリを集めても木は見ていなかったかもしれない。松笠を拾い、松葉で遊んでもマツの木には関心もなかった。マツの若葉の匂いは初夏を告げる刺激であったりしたが、マツは樹皮が手に痛くて上るのは適さない木だった。木の登り、樹上で生活するのは、ターザンの映画で子供たちの憧れだった。しかし、ジャングルは近くの森林には見出せなかった。
 林相という言葉は、森林の分類として学んだ。森林の成立要因の相違によって森林は分類される。といってもその成立要因が分かっていなければ林相に分類するのは難しい。樹種で言うなら、例えばアカマツが優先していても広葉樹が混生し、その広葉樹も様々な樹種が含まれるとなると、それらの樹種を羅列したのでは分類とはならない。全く、主観的に優勢な樹種を見出して、林相として特徴づけようとするが、相対的な評価がまた難しい。どの程度、優先すればよいのか。
人工林は造林樹種を限って構成されているので林相は簡単に判別できる。しかし、その人工的な単純化に下層の植生は自然の多様性を主張するようである。下層植生の多様性も土壌が貧困になると単純化し、一様となっていく。自然林や豊かな土壌の植生の多様さの中で、林相の分類は難しい。森林の範囲が広いとどこに林相の相違する区切りがあるのか見出すことも困難となる。類型による分類よりは、それぞれの木の個性とそれらの木で構成さされる樹群の個性、樹群によって構成される林分の特徴、林分によって構成される森林構造を見出した、松川恭佐氏は賞賛されて当然だろう。(参考文献:造林技術の実行と成果:造林技術編纂会,日本林業調査会、昭和42年)

樹木による森林の個性
 私の場合で言えば、ある森林を見る時、特定の樹種が印象づけられ、その樹種に注目して森林の特徴をとらえてしまう。しかし、同じ森林を別の樹種に注目すれば、森林の特徴は相違してくる。これは、新緑や開花、紅葉である種類の樹種が際立つ時、森林の印象はその際立った樹種によって特徴づけられることは誰も体験するところだろう。
樹群の構成による森林の個性
林分における森林の個性
森林の個性 地形との関係
森林の個性の抑制と発揮