公園の森林施業

はじめに
 施業林を公園としたのか、公園に施業林があるのか、時代の流れのとともにその意味が変わってきた。松本アルプス公園の場合、施業林を公園としために、公園内に施業林があることは当然である。しかし、公園内の施業林は施業林として取り扱われないために、荒廃の危機が生じている。アカマツ林、カラマツ林、ニセアカシア林が、マツ枯れ病と倒木によって、森林崩壊の光景を生じさせ、森林を楽しむ公園林とは程遠い状態となってきた。公園開設当初は、それまでの施業と間伐で、施業林が公園とされた感があったが、それから、十数年で破壊的な様相を生じ始めたのである。
 この原因は、公園当初の計画に森林施業の継続が盛り込まれず、間伐や保育が森林管理上必要であることが、盛り込まれていなかったことによるのである。ニセアカシアの下生の藪は刈り払われているが、萌芽による繁茂を持続させていることにもなるであろう。間伐の遅れによる倒木や樹木の衰退は、間伐を定期的に進めなかったことによる、樹木の病害もその結果といえるだろう。施業林が公園化されて、施業がなされず、森林が保護的に扱われて、結果的に放置の弊害を生じているところは、随所に見ることが出来る。
 ヨーロッパの都市林は、都市の所有する公有林として施業がなされるようになり、やがて、部分的に公園としての利用がなされるようなったということであるが、森林施業を持続させたまま、公園部分を作り、施業林内にも散策ができるようになっているようである。さらに、公園利用の増大は、公園のための敷地を確保し、施業林とは言えない、公園林を作り出したと考えられる。キューガーデンなどを公園林として見た時、植物園であるから様々な樹林を作り出しているが、樹林の持続のために更新樹が用意されていることである。森林施業が木材収穫を目的としているのに対して、公園林は森林の持続を目的としている。更新のための除去される老木が、木材として利用されることになれば、森林施業と変わりはないことになる。林分を単位として、択伐、皆伐などの施業による公園管理がなされていると見ることが出来る。

公有林の森林施業
 公園の森林も公有地である点で、公有林ということができる。一方、公有林は、集落の入会林から、市町村制における市町村有林が設定され、市町村合併によって、新たな市町村有林に編入されるか、旧町村による財産区の設定がされるかに分かれた。集落の入会林は、共有林となるか、個人有林となるかに分かれ、今日の林地の所有形態が定まったといえる。一方、所有の不明確な奥地や社寺有林、藩有林が、広大な国有林を形成した。明治に官有林とされたところから、自治の基盤として、財産としての公有林が再配分され、市町村有林、都道府県林の設定もなされている。
 共有林、財産区有林、市町村有林、都道府県林は、地区、地域、自治体にとって、財産として運用されるとともに、防災、水源涵養、住民の休養の環境や場を提供してきたといえる。集落の社寺林を共有林としてみるなら、こうした多様な機能をもった森林を育成してきた普遍的な例であるだろう。