広葉樹と針葉樹の樹形構成

はじめに
 小根山見本林でケヤキ林の施業地を見たことがある。20数年後に行くと成長が悪く、弱っている木が多かった。ケヤキは段丘崖や山裾、神社、屋敷林で大木をなして見る事が多いので、有用性があり、自然に生育するとともに植えられてもいるのだろう。ケヤキが単木である時、樹冠は大きく、丸く放射状に広がっている。大木の樹林は、数本が単木の樹形を示して、単木よりもさらに大きな樹冠となるので、とんでもなく大きな木があるように見えることがある。その場合、個々の木の樹冠は複雑に入り組んで、一つの樹冠の一部となっている。
 アカマツの単木の樹冠も傘状に広がるが、樹高はあまり高くならない。幼木の時期には円錐形であるのに、単木で枝が張り、樹冠が広がるのであろうか。一斉林では幼木の樹形を維持して、上方に競争して樹高を高くするが、樹冠が小さくなり、全体が弱り、枯死木が生じてくる、樹林ではケヤキと同様に樹冠が一つとなって連続し、高く丸い樹冠となる。しかし、個々の木の樹冠の大小は著しく相違し、それらの大小の樹冠によって一つ樹冠が構成されている。林をなしていたアカマツ林が疎林となり、高く上がった個々の樹冠が大きく広がった場合に、大木のアカマツ林が生じるが、やがて、閉鎖し、樹冠が森林全体で連続すると、樹高成長は停滞してくる。若齢林で衰退するアカマツ林がある一方で、疎林となって、200年にも及ぶ巨木のアカマツ林を見出すことがある。
 広葉樹の樹形は傘、球形、針葉樹は円錐形と一般的に考えられるが、さらに樹齢や樹種ごとに見ていく必要がある。様々な樹種の混淆した天然林は複雑で入り組んだ樹形で構成されていて面白い。これまで長年の競争と共存がそこに見出されるからである。針葉樹の円錐形の要因は一年間の上長成長が、梢と側方の放射状の側枝の伸張によって行われ、また樹冠の側方への伸張が下方の枝の伸張によって行われるためである。これに対して広葉樹の球状、傘状の樹形はそれぞれの枝が分枝しながら四方に伸張するためである。樹冠は幹によって支えられるが、林間にあって同形の隣接木と接して伸張すると、側方の樹冠が伸張することが出来ず、梢と上部の樹冠だけが伸張することができ、下方の樹冠は枯れ上がることになる。これは図式的な仮説であることをお断りする。こうした枯れ上がりと樹冠の変化は陽光によって伸張が左右されているためであることは明らかである。しかし、陽光への要求は樹種によって相違し、林間の樹冠の構成は複雑な様相となり、林木間に成長の格差により、大小の高低の樹冠の格差が生じると考えられる。