ニセアカシア林の倒木

はじめに
 防災のために植えられたニセアカシアが倒木によって斜面の崩壊を引き起こすとしたら大きな矛盾である。ニセアカシアマメ科であるために、窒素を固定して貧困地にも植えられているが、斜面のあちこちで目にする倒木は何故生じるのであろうか。ニセアカシア林の斜面下部の住民には不安であり、実際に被害の危険もあるであろう。
 ニセアカシア林は外国樹種であり、繁殖力が大きく、在来の樹種や下層の植物を衰退させるということで、自然保護の点から問題とされているが、北アメリカ産のニセアカシアがヨーロッパでは林業樹種として定着しているということであり、日本でもその可能性もないとは言えない。植林して30年生くらいで過密になり、倒木が生じている森林と50年生以上で倒木が生じている森林が近辺で見られるが、過密なために自然間引きが生じているのであれば、高齢林の成林となり、循環的な林業の樹種の可能性もあるかもしれない。倒木が被害となる森林では間伐して収穫すれば、森林施業の体裁へと近づくであろう。ニセアカシア生態学文一総合出版:2009
 しかし、果たして、過密による倒木なのかが、問題である。過密であれば、樹冠の優劣で劣勢木から衰退するはずであるが、50年生以上の森林では必ずしも劣勢木が倒木となっているとはいえない。また、根倒れした根系は、小さく、浅い状態である。土壌が柔らかくなり、根が硬い土壌に到達していないようであり、20m以上の樹高で太くなった幹の加重を支えられないのは、当然である。風も無いのに、周囲の木の樹冠の支えが効かなくなって倒れているようである。また、冬季に倒れることが多いのは何故だろうか。
倒木の小さな根系
ニセアカシア林、ケヤキなどの混生

倒木の要因仮説
倒木の樹高が高く、樹冠は小さく、上部にある。
倒木後の樹冠、ギャップが生じていない。
斜面林の崩壊。連鎖的な倒木。

ニセアカシア林の倒木に対処した手入れ
 30年生のニセアカシア林は、ヘクタール1000本と密生しており、さらに過密となると、自然間引きが生じることが考えられる。ギャップの形成とともにケヤキなどと混生する可能性が生じるが、これを先行して手入れを進めるとすれば、ギャップ更新を考え、画伐を行い、ニセアカシアを樹群に分散させ、伐採地にはケヤキ、エノキなどを植栽すればよいが、サクラなども植栽し、まず、サクラの混生、その後、下層のケヤキの生育の二段階の過程を考えるとよいだろう。ケヤキとの混生の段階で、ニセアカシア樹群の間伐を行い、全体密度をヘクタール200本〜100本程度とする必要があるだろう。
 50年生以上で密生したニセアカシア林は倒木の危険が大きい。しかも、根系が優勢木、劣勢木ともに小さい点で、優勢木から倒木することが考えられる。根系の状態から判断して、優勢木の伐採を進める必要がある。皆伐は、伐採後萌芽更新によって藪となる危険性があり、倒木の危険性の少ない、劣勢木を残すのが得策である。過密で樹冠で支えられている状態から、倒木が連鎖的に生じる危険性も無視できない。そうした場所では画伐で小面積皆伐を行う必要がある。ケヤキなどの混生木の成長が促進されることにも効果的であるだろう。しかし、大きな伐採跡地はつる類などの繁茂の可能性が大きい。つる類に対処しながら、やはり、ケヤキ、カエデ類など植栽しておくことが、つる切りなどの育成期間を縮小するのに役立つだろう。植栽しなくても、自生してくるならば、それらの自生木の生育が植栽に優先することは、いいまでもないだろうが。