天然林の施業

はじめに
 天然林は人工の手が入らない自然林として成立した森林といえます。これに対して人工林は植林し、施業を行う森林として成立させた森林です。天然林で木材を収穫し、森林更新をして持続的に利用する場合に、天然林は天然林とは言えなくなりますが、植林による人工林とも相違します。人工林を放置し、人工の上層木の衰退と自然の下層木の生育が生育して混交林が形成される場合も、人工林とは言えなくなりますが、天然林とも言えません。
 放置された人工林、天然林の木材収穫後の放置された森林を数多く見る事ができます。こうした森林も数十年の経過の後には、森林蓄積は増大しています。蓄積された林木を収穫すると同時に、更新し、持続的な森林に転換させる施業が必要といえます。
 そこで、天然林施業といえるものが必要とされてきます。高橋延清氏は「東京大学北海道演習林における長年にわたる大規模な天然林施業実験から、森林がもつ木材生産の経済性と環境保全の公益性を両立・発展させるための、森林施業法を研究・発展させた。そうした森林施業法のひとつに、1958年(昭和33年)から開始した、天然林を対象とする生態系への配慮から生まれた独特な伐採法による天然林の育成法である「林分施業法」がある。」ここでの林分施業法は、天然林の収穫段階から森林の持続を考えた施業法と考えられますが、重要な点は高橋氏が、天然林施業実験を行ってこの方法を確立している点です。
 広大な林地は立地条件の変化と林木の生育状態の相違によって無数の変化を生み出していると言えます。しかし、皆伐や森林火災、植林によって、一律な森林が形成されていくように見えます。

林分単位 上層の林冠群 下層の林床群