風致と風景 壮大な空間

 空間は英語において宇宙と同義である点で、無限の広がりが想定されている。しかし、無限は想像の範囲を超えており、宇宙自体が有限の空間を想定しているように見える。満月は地球の親しい友を宇宙の孤独の中に知覚させる。太陽系惑星のきらめきと銀河系の星の帯は遙かな宇宙の奥行きを感じさせる。宇宙の拡散と集合はさらに無限の空間の中で何を意味しているのか?星空の謎が解けるにつれて、新たな謎が深まっていく。
 太陽の陽光が地球の自転と公転によって変化すること、地軸の傾きが季節的変化をもたらしていることが、地上のわれわれの生活を支配している。そして、日々の風景は天空の陽光や星空に地上の様々な事象が呼応しており、その壮大な変化をドラマとして見せている。一日、一年と循環的に変化しながら、同じ風景は二度と現れることない、無限の時間の繰り返しなのだ。われわれ人間の数十年の寿命には、想像を絶する循環的時間、その時間とともに生成する地球の変動は何に向かっているのだろうか? 
 空間の知覚は人が行動するための広がりを認識する上で必要である。広がりとしての水平面に対して垂直の軸が加わることによって、3次元の空間が知覚される。水平、垂直は重力の働く方向を示している。個人の意志的行動の空間知覚は、視線の強い方向性によって条件づけられている。遙かな遠方への目標に向かう空間は、注視する前方(ヴィスタ)に収斂する透視図法(パースペクティブ)としての空間知覚となった。また、多様な目標への見渡す知覚はパノラマとなり、周囲に囲繞された主体を意識させる全体空間の知覚を生み出したといえる。