郷土保護

はじめに
 1900年代初頭のドイツで郷土保護運動が展開したという。J.ヘルマント編著・山縣光晶訳:「森なしには生きられない」によれば、19世紀初期の工業化によって変わり行く郷土風景の美的価値と改良に対する音楽家ルドルフの主張(1880)によって郷土保護運動が展開し、1904年に郷土保護連盟が結成された。ドイツが敗戦国となった第一次世界大戦(1914〜1917)までその活動は展開したということである。1894年にイギリスで設立されたナショナル・トラストはオープンスペースの保存を志向したといわれ、ラスキンの風景論「近代画家論」に示された近代の風景意識の展開とその運動は関係している。ドイツにおけるルドルフの郷土風景への意識にラスキンの風景論は関係していないのであろうか。また、先行しているイギリスのナショナル・トラスト運動にドイツの郷土保護連盟の運動は影響されていないのであろうか。
現在、日本で国土計画で重視されている景観や、ふるさと重視などに見られる、景観やふるさとの概念は歴史的な運動にみられる目標にどのように近接しているのであろうか。