木の花と香り

はじめに
 高木の花は目立たない?いや結構大きな花の種類が多く、一面について目立つ種類も多い。しかし、その花の観賞は、サクラばかりが際立っている。ニセアカシアがあんなに、一面に花をさかせ、香りを振り向いていたのに、人は振り向かない。葉とともにある花、高い樹冠についた花には注目しないのであろうか。たくさんの花があるとその場所には、なにか快い匂いで充たされている。香りから花を探すこともある。
 しかし、あいにく、樹の名前をあまり、覚えていない。英語と同じく、沢山の樹の名前が耳に入ると、別の耳から名前が押し出されてしまう。樹の葉や幹、生えていた場所の印象は残っているのに、その樹がどんな名前だったか、つながらないのである。恥ずかしい限りであるが、名前なんかに拘泥しないで、印象と写真でとらえておいて、図鑑で調べればよいとしている。
 図鑑もまた多くの種類が一堂に会して混乱する。図鑑も植物の一部の性質を対比して、いるので、印象とは別の注意が必要となる。名前を知るために樹を感じているのではない。感じている樹の名前を知りたいだけなのだと、図鑑も持って歩かない。すべてがもとの木阿弥で、小さな時から親しんだ樹も名前を知らないことが多い。
6月28日
大きな葉はキリの仲間なのだろうか?

すいかずら
 6月2日に撮った写真であるが、路傍のスイカズラに、香りを楽しんだ。潅木に巻きついて樹冠を覆ってしまい、樹を弱らせてしまう。嫌われて除去されることが多い。しかし、この花の匂いの良さ、花の高貴さを知るものは、枯らされる潅木よりも珍重するはずである。

花と実でわかる樹木
 馬場先生からは、樹の名前を教えてもらった。先生は葉の図鑑、冬芽の図鑑の本を出し、今年には、花と実の図鑑を出された。花と実の図鑑には951種が収録されている。大変な集積である。私は門外漢から門前の小僧にもなれず、図鑑を開くのを恐れている。身近な樹の名前も知らないのに、また、忘れてしまうのかと膨大な種類に圧倒される。しかし、日本の人口からすれば、数百本の樹は多寡が知れているといえなくもない。身近な樹も百本覚えていれば苦にすることはないはずであろう。

 それにしても、花や実は一時のものであり、葉や冬芽も落葉広葉樹では季節的なものである。樹種の個性はそうした時期の限られた特性を越えたもの、すべての部分を包含したものだろう。自分の樹への実感はこうした樹の個性なのである。