道路景観

はじめに
 道路景観は土木分野の景観論の一部であり、観光道路、高速道路の建設の進展とともに、道路景観の問題がクローズアップされてきた。観光道路は道路外の景観が対象となる点で、観光計画の一環で道路からの景観が問題となり、塩田先生らによって阿蘇山の観光計画の中で取り上げられた。これは、ケヴィン・リンチの景観要素を記号化し、その推移として道路からの眺望景観をとらえる手法が採用されていたように思う。自動車の普及と道路建設の進展は、法面緑化という面から道路景観の修景がはかられ、その開発に新田先生らの取り組みがなされた。新田先生はその後、道路公団における修景と自動車走行の信号として植栽の位置づけを行った。道路構造からの道路景観へのアプローチは土木分野の景観研究の端緒となり、中村良夫氏が景観論に取り組んだ。都市整備の面から街路の修景は並木として古くから取り組まれている。新田先生は街路景観を並木の間隔と自動車速度の関係の面から取り組まれたことがあった。
 道路景観の計画技術はイギリスの造園家、シルビア・クローの著作が知られている。道路の内部景観と道路からの眺望景観の関係はこの著作で考察されている。景観の中に道路をどのように建設し、景観と一体となった道路を作るかという考えは、日本では希薄なように感じられる。土木構造物である道路を景観を破壊して建設し、その後に、修景や緑化で破壊の痕跡を隠し、眺望の良い場所だけに注目して、展望を見所にするような場合が多いのではないだろうか。人口が稠密な場所を通過する場合、道路は排気ガスと騒音、振動などの公害の発生源となり、壁によって覆いを作る場合も多く、急峻な山地では工事による地形破壊の規模が増大し、最初から景観破壊が前提となる場合が、多いということが、原因となっているのかもしれない。

山岳道路の景観