原子力発電とリニア中央新幹線

はじめに
 3月27日に名古屋で「リニア中央新幹線は必要か(シンポジウム)」が開かれ、大鹿村南アルプスの自然を守る会の事務局が出席した。そして、次のようなメールがあった。「このメールは今回の福島原発事故に対して私達、リニア計画と浜岡原発中止を求める団体が出した宣言文です。  放射能と自然破壊は未来を担う子供達に致命的なダメージを与えます。 このことをより多くの人々に知って欲しい、そして行動して欲しいと願い込め発信しました。」
 そして、そのシンポジウムで出された名古屋宣言は、JR東海が計画しているリニア中央新幹線東海道新幹線の3倍といわれるエネルギーを必要とする。それは原発数基分に匹敵するエネルギー量であり、当然のことながらリニアによって原発の増設が必要となるであろう。そしてそれらは、ごく常識的に考えれば柏崎や浜岡から送られるはずである。の文言が盛り込まれ、すでに柏崎は大地震に襲われ、浜岡も東海大地震を目前に控えている。福島原発の惨状を見るにつけ、こような危険なエネルギー需要をベースとするリニア中央新幹線計画は中止すべきだと考える。と結論づけられている。
 4月9日の新聞記事では国の交通政策審議会中央新幹線小委員会が8日に開かれ、大震災を踏まえ、施工技術面から検証して、最終答申するということであるが、Cルート(南アルプス通過)で第二新幹線の必要は変わらないとしている。地質の専門家は東海地震によりトンネル出入口で土砂崩れの危険性も指摘されている。国土交通相は大震災を受けて新たな視点を入れないといけないと記者会見で表明したとのことである。
 南アルプスの自然を守る会、リニア計画と浜岡原発中止を求める団体、交通政策審議会中央新幹線小委員会、国土交通相の立場と意見に大きな格差があることに、気付かれるであろうか。少なくとも、大震災を踏まえるということでは共通しているのだが、交通政策審議会中央新幹線小委員会では、原子力発電の問題や今後の節電の必要性には、全く触れていない。また、南アルプスの自然を守る会が心配する、自然環境破壊は、その他の立場では触れておらず、地元住民の立場は尊重されていない。
 リニア中央新幹線は、JR東海の一企業による計画であるが、第二新幹線の必要性の主張によって投資に国の援助を期待している。今回の大災害は、リニア中央新幹線建設と原子力発電所の関係を顕在化させた。国土交通相は大震災を受けて新たな視点を入れないといけないと言明している。経済発展と環境保全は両立しないまま、現在に至っている。持続的な環境が確保されなくては、安定した国民生活は確保されず、堅実な経済発展も見出せない。