生物空間の場所の構造

はじめに
 個々の生物にとって生活の場所が構成され生存している。生物は多くの種に分類され、それぞれ特有の形態をもって生活している。多様な種によって生物空間の有機的関係が生み出される。それぞれの生物は生活範囲が相違し、その生活は周期性をもって生成している。日々の食物や栄養の吸収と排泄と排出、そして個体の生死と種の集団の更新と繁殖によって種の持続が行われる。生物空間の有機的関係は個々の生物の生活の関連によって成立し、有機的関係によって成立した環境の変化によって個々の種の消長が生じ、それによって環境の変化と持続が生じる。
 生物空間を構成する個々の生物の生活空間は、有機的な関係によって生じた場所に適合する。どんな生物が存在しているかは、生物空間がどんな場所によって構成されているかである。花が咲いていることによってハチがやってくる。花を咲かせる植物は、他の種と競合しながらその生育空間を確保している。

多様な種の生物空間
 人工環境は人間の生活のために自然環境を改変して成立している。その環境は多くの種の生存を遮断しており、人間に共存して生活空間を確保することは困難である。限られた種が自然の残存程度によって、生活空間を確保することができ、人間と共存する。自然回復の進行は生物空間を多様化して拡大する。生物空間の回復過程で環境の変化が生じ、自然環境をを多様化する。
 人工環境が自然の残存と様々な自然回復の過程を含むことによって、生物空間を構成する種は多様となり、自然回復によってその多様性は消長する。しかし、面的に広がる多様性と限定された空間範囲の多様性は相違する。限定された空間範囲の多様性は生物空間の階層構造によって確保される。面的に広がる多様性は生物分布として示される。
 個々の生物はその生活に応じて場所を占有し、相互の活動の関連に応じて場所の重層が生じる。生物の生活場所の平面的な広がりが地表にモザイクを描いてはめ込まれていると考えられる。生物の生息の階層構造はこの平面的な広がりの垂直な重層と考えられ、生物相互の重層によって生物空間の場所の重層構造を構成する

自然林と人工林の生物空間
 一斉林が同一密度で広がっている場合、下層は均質な光環境となって、この下層の均質条件が単調な生物空間をもたらす。樹種、樹齢が多様で混生した自然林は、多様な光環境を下層にもたらし、複雑多様に重層した生物空間をもたらし、多様な種の生物空間を構成する。