宇沢弘文氏と出会ったこと

 宇沢弘文氏が亡くなられ、NHK特集番組が放送され、伊那に南アルプス林道の自然保護運動の調査団が来られたことを思い出した。その後「自動車の社会的効用」が出版され、この調査の結果に触れられていることを、人から指摘されたことを思い出した。特集番組によれば、宇沢氏は数理経済学者として世界的な評価があり、アメリカの大学教授となり、その弟子にノーベル賞を受賞した経済学者がいるということで、日本に帰国してから東大教授となり、帰国後の最初の著書がその「自動車の社会的効用」であったと言うことである.経済成長が社会の不均衡を生み出していくことを是正することを目指し、自由競争を成立させる社会的基盤の必要を主張した経済学の論拠を生み出した学者であったということであり、実際の現状の解明と解決策に現場主義を貫いた人だということである。この考えに賛同した人は多く、実際に地域の共通財産の形成に当たられる人が輩出しているとのことである。私はそんな立派な学者とは知らずに、宇沢氏を囲む団体の仰々しさに驚く地方の自然保護運動の一員でしかなかった。周囲から道路開設に反対して、お前も自動車に乗っているのではないかと、つまらない言いがかりにうんざりしたものだった。しかし、宇沢氏は自動車による社会的問題を指摘し、自らも大学までランニングで通っていたという。私は今にして自分を恥じ、宇沢氏に初めて尊敬の念を抱く状態であった。