夜の散歩

 朝と夜,毎日散歩する。犬の伴でもあるので毎日を欠かすことはない。毎日のことなので歩くコースはいくつかのコースに限定されている。人家を避けて周囲の果樹園の道を通る。斜面の果樹園に等高線に沿って3つのルートがある。上段,中腹,谷で中腹と上段は眺望が開け,市街を見下ろし,山並みを見て,天空が開かれている。谷は流れが横にあり,竹林と雑木林の林間の道である。これらの3つのルートの上下ををつないでいるのが2つの坂道で,ルートによって登りと下りが入れ替わる。中腹の道がいつも中心にあって,中腹から上段へ,中腹から谷,谷から中腹へのいずれかの回遊路である。

 夜は中腹から上段に向かい,住宅地に入って帰ってくる。上段から見下ろし,見上げる夜の眺望は,地上と天空に人家の灯と無数の星,時に満ち欠けする月の明かりに夜の闇が満たされている。特に星空に向かい合う時,無限の宇宙の広大さに我を忘れる。宇宙に開かれた闇は星々の大小,遠近を感じさせ,宇宙の闇の奥行きを感じさせる。太陽系の惑星の一つである地球から,銀河系の輪に囲まれ,どこか,遥かな中空を駆け抜けている。しかしそれは果てしない時間の空間で人間には永遠といえる運動であり,瞬間なのである。銀河系の星々は大爆発によって円板状に飛び散り,爆発の中心から,無限の遠方へと拡散しているという。果てしない拡散は,再び集中へと向かい,その中心は暗黒星雲であるという。

 さて,地球の自転によって,1時間に15度天空が移動し,星の位置が変わっている。そんなにも立たないうちに元来た我が家に犬とともに辿り着いている。