秋分 朝夕の景色

 朝の目覚めが遅くなって秋分で,夏への区切りが明瞭となる。我が友,岳も眠りが深い。といっても天気が悪く,日の出で起こされた訳では無かった。天気が良ければ,周囲の山の稜線からの日の出が南に向かって羅針盤の如く移動し,その起点から冬への移動がこれから生じることになる。

 障子ごしに室内が明るくなり,窓をを開けると,日の出が見られることになる。稜線が明瞭となり,ひのでが始まって眺望が色彩と陰影をもって明瞭となる。体をほぐすと意識も明瞭となる。日の出に手を合わし,晴れやか空と深淵なるご来光に感謝する。

 外に出て,歩く時,道の前方は遠近法の眺め,透視図法の景色となる。透視図法によって,イタリア・ルネッサンスの都市空間,街路と広場は遠近の連続性あるいは対比が鮮明となったのであろう。事物と眺望の対比,注視される対象と背景が絵画の主題となり,背景に山岳の風景を描いた画家として,ダ・ヴィンチが挙げられ,風景画の始まりとされる。人生最後の絵画,モナリザに,ゲーテのイタリアの風景を背景とした絵画が重なってくる。

 透視図法の効果は前方への直線的な視線と視野のひろがりであるが,限界は空の不変さである。遠近の様々な知覚を視覚の面で包含しているが,直線方向の視線による視覚の持続によるもので,限られた空間の条件で成立する。

 散歩で経験する知覚は,環境条件に応じた多様な事物とその事物の全体や部分,細部の形態であり,感覚への刺激と注意,注視によって知覚される。